Research Abstract |
研究計画調書で示した研究計画に従って,本年度は,下記の研究課題に取り組んだ。 (1)診療報酬明細書点検調査結果を用いた医師誘発需要仮説の検証 医師誘発需要仮説は,医師が自身の所得が減少した際に,過度なサービス供給を行うという仮説で,医療費の高騰要因の一つとして挙げられる。本分析では,筆者の知る限り,世界で初めて,保険者及び支払機関のレセプト点検データを用いた実証研究であり,診療報酬のマイナス改定が,誘発需要の主要因であることと,誘発需要はマクロレベルの医療費に対して,ほとんど影響がないことを示した。 (2)国民健康保険における被保険者の最小効率規模 国保が抱える構造的な問題を解決するために,現在,都道府県への再編・統合が議論されているが,それは,実体を反映した提案であって,必ずしも科学的な根拠に基づくものではない。本分析では,上記議論に科学的な根拠を与える研究である。分析の結果,二次医療圏レベルでの統合で,国保保険者の規模の問題は,ほとんど解決できることが分かった。 (3)国保財政の効率性に関する実証分析 本分析では,国保が抱える様々な構造的な問題のうち,どの要因が最も非効率性を生み出しているのかを分析しており,本分析の結果は,今後の国保改革に対して,重要な資料になりうると思われる。残念ながら,年度末までに,推計上の問題を完全に克服することができなかったため,次年度に継続して研究を行う予定である。
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