Research Abstract |
「いじめ」の生成過程を分析し,予防・解消に向けた基本的な枠組みを作成するために,学校でみられる「いじめ」を,形態と内容により分類することを試みた。具体的には,攻撃の方法が,直接的な方法か,あるいは非直接的な方法かによる分類と,学級内の不特定多数からの攻撃か,あるいは特定の仲間集団内の者からの攻撃かによる分類とを組み合わせ,「いじめ」を4つのタイプに分類した。次に,それぞれのタイプの「いじめ」が,小学校から高等学校までのどの校種でより顕著にみられるのかを明らかにするために,女子大学生を対象にした回想的な手法による調査を実施した。その結果,年齢が上がるに従って,直接的な方法による「いじめ」から,非直接的な方法による「いじめ」へと内容が変化していく可能性があることや,校種によって顕著な「いじめ」のタイプが異なる可能性があることが示唆された。以上の結果を参考にして,高校生を対象にした予防・解消プログラムを作成するために必要な基礎的な資料を収集した。具体的には,高校生にみられる「いじめ」に関連する出来事を,大学生を対象とした調査を行って抽出した。その後,そうした出来事と,「いじめ」被害感覚との関連について,高校生を対象とした調査を行って検討した。さらに,「いじめ」被害感覚と,友人関係の在り方や学級適応感との関連についても,高校生を対象にした同調査の結果をもとにして検討した。その結果,高校生の「いじめ」被害感覚に関連する出来事には性差がみられることや,「いじめ」が学級適応感に与える影響は女子の方が大きいことなどが示唆された。こうした基礎的な検討をもとにして,高等学校入学前の学校適応感等の調査や,「人権」に関連する授業内容の工夫,さらには「いじめ」被害状況の定期的な調査と調査結果の統一的な活用などからなる「いじめ」予防・解消プログラムの試案を作成した。
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