2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19830095
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
秋吉 史夫 Doshisha University, 政策学部, 講師 (30454490)
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Keywords | 預金取付け / 「最後の貸し手」機能 / 日本銀行 / 昭和恐慌 / 銀行 |
Research Abstract |
本研究では、昭和恐慌期(1930-1932年)のデータを用いて、預金取付けの分析及び日本銀行による「最後の貸し手」機能の評価を行った。これまでの預金取付けの実証研究では、データの制約のため、中央銀行による「最後の貸し手」機能を明示的に分析に取り込むことができなかった。しかし、本研究が分析対象とする昭和恐慌期については、日本銀行による流動性供給に関する詳細な記録が文献として残っており、これらを利用することによって、先行研究におけるデータ制約の問題を解決することができた。 日本銀行から流動性供給を受けた銀行を実質的な破綻銀行とみなし、休業銀行のサンプルとともに破綻銀行グループとして分析を行った。預金取付けの非発生地域では、破綻銀行の推定破綻確率は生存銀行よりも有意に高かった。一方、預金取付けの発生地域では、破綻銀行と生存銀行の推定破綻確率に明瞭な違いは見られなかった。このことは、預金取付け発生時における預金者の混乱がかなり深刻なものであったことを示唆するものである。 更に、預金取付けの発生地域について、日本銀行から流動性供給を受けた銀行と休業銀行の破綻確率を比較した。その結果、日本銀行から流動性供給を受けた銀行の破綻確率は休業銀行に比べて有意に低かった。このことは、預金取付けの混乱時に、日本銀行が健全な銀行に対して選択的に流動性を供給し、健全な銀行の休業を防いだことを示唆するものである。このような日本銀行による「最後の貸し手」機能の発揮は、預金取付けによる社会的コストを緩和する効果があったと考えられる。
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