Research Abstract |
これまでのストレス研究では,抑うつ,不安などのネガティブ感情がストレス反応や健康状態に与える影響について数多く検討されてきた。しかしながら,ポジティブ感情や生活満足度が心身に与える影響について,精神神経内分泌免疫学(PNEI)反応などの客観的指標を用いた検討は少ない。そこで平成19年度では,大学生150名を対象に健康関連行動調査やGHQ-28,SUBIを実施すると同時に,唾液を採取し日常生活場面でのPNEI反応を測定することで,健康関連行動(睡眠時間,食生活,喫煙習慣など)や健康状態,主観的幸福感が心身に与える影響性を検討した。 その結果,日常生活場面において,主観的幸福感が高い学生は低い学生に比較してs-lgA抗体産生量が有意に高値であった。主観的幸福感や生活満足度の高い個人は,そうでない個人に比較して免疫機能が活性化していることが示唆される。しかしながら,実験室において急性ストレスを負荷した際の心理生物学的ストレス反応(気分,PNEI反応)には主観的幸福感の高低に違いはなかった。 さらに,睡眠時間がPNEI反応に与える影響を検討した結果,最適睡眠時間者(6〜7時間睡眠)に比較して,短時間(5時間以下睡眠)あるいは長時間(9時間以上睡眠)睡眠者よって主観的健康観が低下し,ノルアドレナリン神経系の過活動や免疫機能低下などの慢性ストレス状態に至る可能性も示された。 日常場面における主観的幸福感や健康行動とPNEI反応との関連性を検討した本研究は,今後の健康教育に示唆を与えられ,現代社会の健康問題に大いに貢献できると考えられる。
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