2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポストMFAにおけるベトナム輸出縫製部門の産業高度化と競争力強化への課題と可能性
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19830112
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
後藤 健太 Ritsumeikan Asia Pacific University, アジア太平洋マネジメント学部, 准教授 (70454981)
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Keywords | ベトナム / 繊維・縫製産業 / 産業高度化 |
Research Abstract |
今年度はベトナム(ハノイ)にて調査をするとともに、アジア縫製産業の展開に重要な役割を果たす香港および上海の調査も実施した。その結果、ポストMFAという国際環境変化においてもベトナムの縫製産業は強い成長を実現していることが確認された。ただし米政府の対ベトナム輸入規制・監視プログラムの発動は同国の輸出縫製産業にとり大きなリスク要因となっており、仕向け先の多様化(とくにEU市場・日本市場向けの増加)が進んでいる。このことは、ベトナムの縫製産業の今後の産業高度化のあり方に大きな影響を及ぼすと思われる。また、人件費の急激な上昇と労働力不足が深刻化しており、生産性の上昇を実現してこなかった縫製企業にとっては大きな問題となっている。そうしたなかで生産工場の郊外への移転などを実施している企業は多いが、今後の産業発展にはさらなる生産工程および品目の高度化を進めるとともに、機能高度化を進める必要性が高いと思われる。 ベトナム縫製産業の国際競争力とMFA撤廃後の動態的変化をミクロ的にとらえるため、香港のバイヤー企業とのインタビュー調査も行ったが、その中で中国、とりわけ南・沿海部からベトナムへの生産流出はポストMFAにおけるアジアの輸出縫製品生産のひとつの大きな流れであることが明らかとなった。ただし、ベトナムと比較してその後方連関産業が発展している中国東北部への産業移転も同時に起こっており、こうした裾野産業が未発達であるベトナム縫製産業の課題を浮き彫りにする形となった。 以上より、今回の調査でベトナムの輸出縫製産業が抱える課題がある程度明らかとなったと思われる。ただし、今回の調査ではベトナムの最大の輸出拠点であるホーチミン市の調査を行うことができなかった。しがたって次回の調査ではホーチミン市の輸出縫製産業を調査し、カンボジアなどの新興輸出縫製国の調査もあわせて行い、ポストMFAにおけるベトナム輸出縫製部門の産業高度化と競争力強化への課題と可能性を検討したい。
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