2007 Fiscal Year Annual Research Report
LHC・ATLAS実験における超対称性粒子発見のための実験的研究
Project/Area Number |
19840013
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 真平 The University of Tokyo, 素粒子物理国際研究センター, リサーチフェロー (40451835)
|
Keywords | 素粒子実験 / ハドロンコライダー / 超対称性 / カロリメータ |
Research Abstract |
本研究は、欧州原子核研究機構の陽子・陽子衝突型加速器(LHC)において設置されるATLAS検出器を用いて超対称性粒子を探索し、その発見を目指す実験的研究である。数TeVまでに存在すると思われている超対称性粒子を直接発見してその性質を探ることは、素粒子物理学の発展・新しい方向性を探る上で重要な研究である。理論研究やモデルの再構成などのこれまでの超対称性物理の研究を実験のレベルにまで高め、ATLAS実験において実験初期のデータ(積分ルミノシティ1fb^-1相当)を用いて超対称性粒子の発見を目指す。 まず、研究課題の一つである横方向損失エネルギー(missing ET)の測定法の検証については、カロリメータ検出器でのジェットエネルギーの較正精度や物理事象のトポロジー依存性の定量的理解のもと、これらがmissing ET測定に与える系統誤差を評価した。研究成果はATLASコラボレーションが公表するComputing System Commissioning Noteの一部としてまとめられている。 また、実験開始に向けてこれまでの検出器シミュレーションにとって代わる新しいシミュレーションの必要性が議論されており、その開発・検証を行った。高エネルギー実験ではデータの理解のために検出器シミュレーション・Geant4を用いることが一般的である。しかしLHC加速器での高エネルギー反応では数多くの高エネルギー粒子・ジェットが生成されるため、Geant4のように検出器での反応を1粒子毎トレースしていく枠組みでは膨大なCPU timeを費やす。特に多重の反応を繰り返してエネルギーを落としていくカロリメータ検出器シミュレーションの実行時間は深刻な問題となっており、有限のコンピュータ資源では物理解析に必要となる統計量のシミュレーションデータを準備することが難しい。そこでGeant4のe/gamma、ハドロンのカロリメータ内でのエネルギー損失をパラメータ化し、実行時間を10倍以上改善した新しいシミュレーションを導入した。QCD事象を用いて再構成されたジェットのシャワー形状やmissing ET分布、またその分解能や検出器位置依存性等がGeatn4シミュレーションをよく再現し、実用に耐えうるものであることを示した。 今後この新しいシミュレーションを用いて大量のデータを生成し、超対称性粒子探索の準備解析を遂行するとともにより信頼性のあるシミュレーションデータを得られるように改善を行っていく。
|