2007 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴの閉鎖系飼育システム関発とその骨格を用いた環境指標の高精度化
Project/Area Number |
19840020
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 麻夕里 The University of Tokyo, 海洋研究所, 助教 (20451891)
|
Keywords | 地球化学 / 環境変動 / 気候変動 / バイオミネラリゼーション / サンゴ骨格 |
Research Abstract |
熱帯〜亜熱帯の浅海域に生息するサンゴは炭酸カルシウムからなる外骨格を形成しながら成長し、その骨格には季節の違いを反映した年輪が形成される。サンゴ骨格中の酸素同位体比(δ^<18>O)やストロンチウム/カルシウム比(Sr/Ca)、マグネシウム/カルシウム比(Mg/Ca)は海水温のよい指標としてこれまで測定されており、産業革命以隆の海水温の上昇やエル・ニーニョ現象などに関連した気候変動が多数報告されている。しかしその一方で、δ^<18>O、Sr/Ca比ともにサンゴ骨格の成長速度という生物学的パラメータに依存している可能性が指摘されており、海洋環境が正確に記録されていない可能性が懸念きれている。 そこで本研究では、環境をコントロールして飼育したサンゴの骨格を用いて、骨格中の各種化学成分とそれぞれの環境因子との関係を明らかにすることを目的として、本年度はクローンサンプルを用いて温度の精密制御飼育実験を実施した。その結果、Sr/Ca比はこれまで報告されている通り温度との明瞭な逆相関関係が認められ、サンゴ骨格中のSr/Ca比が温度指標として適切であることが示された。一方、Mg/Ca比は温度のみではなく成長速度にも依存した変動が認められ、温度指標として用いる際には注意が必要であることが示唆された。この他、バリウムやウランについても測定を行ったが、Sr/Ca比ほど温度との明瞭な関係がある化学成分はなく、このことからもサンゴ骨格についてはSr/Ca比が確度の高い温度計として使用可能であると考えられる。
|