2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19840028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有賀 隆行 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 研究員 (30452262)
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Keywords | 生体分子モーター / 自己組織化 / 1分子計測 / エネルギー変換 / 生物物理 |
Research Abstract |
生命はいかにして自らを組織化し、自発的な運動を行っているのか?その壮大な謎に迫るために、統計物理・非平衡物理・非線形科学などの物理科学方法論を発展的に適用しながら、エネルギーや物質の流れのなかでの自律的システムとして生命を理解することを目的として、生体分子モーター1分子の振る舞いを、非平衡開放系すなわち常にエネルギーが流入している散逸条件下において、その1分子内部のサブユニット間での協同的な働きをシステムとして捉えなおす研究を実地している。 まず、申請者のこれまでの研究で得られている多くの実験結果を生かして、F-1-ATPaseのサブユニット相互作用を含めた速度論解析を行った。このとき、分子内で働く協同効果を取り入れた化学反応と回転運動のカップリングを理論モデルに取り入れた非線形型の連立方程式による解析を、京都大学基礎物理学研究所の和田浩史助教を連携研究者としてディスカッションを行い、予備的なモデルの構築に至った。 また一方で、これまでの研究で得られていた分子モーターの運動について既に得られていた多くの実験結果の解析に関してさらなる統計解析を行った。具体的には、hybrid変異体(1xαR364K)を用いたF-1-ATPaseの回転角度の定量的な解析を行った結果、従来80度-40度のステップ回転であると思われていたF-1-ATPaseの回転メカニズムに関して、これまで発見されていなかった新たな回転ステップの素過程(約20度のsub-substep)の存在が示唆された。この結果はF1という回転分子モーターの回転メカニズムにとっての新たな発見となるだけでなく、生体分子機械がいかにして反応を力学運動に変換しているかを解き明かす鍵となる成果である。この成果は2008年3月の国際会議、Biophysical Society 52nd Annual Meeting(米国生物物理学会年会)にて発表を行った。
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Research Products
(5 results)