Research Abstract |
多項式環の部分環の有限生成性に関するヒルベルトの第14問題や,多項式環の自己同型群の生成に関する問題に取り組んだ.前者について,多項式環のある微分作用素の核として得られる部分環の構造を研究し,その生成系に関する「Nowciki予想」に非常に簡明な証明を与えることに成功した.この微分作用素は「基本微分」と呼ばれる非常に基本的な対象だが,これまで「Nowicki予想」に対する分かりやすい証明法は無かった.後者についてはTame Generators Problemと呼ばれる問題に取り組んだ.これは,多項式環の自己同型群が「ある簡単な形の自己同型」だけで生成可能かを問う問題で,非常に難しいことで有名である.この問題の研究は,数年前にShestakovとUmirbaevが「永田予想」を解決したことで大きく進展したが,彼らの理論は難解なため,現在でも専門家の間でさえ広く理解されていないと言われている.我々はShestakovとUmirbaevの理論を,独自に開発した手法を用いて再構築し,理論の簡略化と一般化を行った.その結果,それまで存在するかどうか不明であった「IV型簡約可能自己同型」の非存在を立証することに成功した.この成果は直ちに論文にまとめ,国内外の専門家に伝達したところ,大きな反響があった.それ以外にも,多項式環の自己同型やヒルベルトの第14問題に関し,いくつかの新しい結果を得た.こうした成果の多くは,既に論文にまとめて国際的な専門誌に投稿したり,ウエブ上のプレプリント・アーカイブで発表したりした.また,国内外の様々な研究集会等でも広く公表した.ところで,我々の独自に編み出した手法は,この分野で標準的な代数幾何学的な手法とは一線を画するものであり,両者の接点を探ることが必要であると以前から考えていた.これに関し,2008年3月に関西学院大学で開催された「代数学研究会」で,アフィン代数幾何学の専門家たちと情報交換を行った.研究会は非常に有意義で,今後の研究に役立つ情報を得ることができた.
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