2007 Fiscal Year Annual Research Report
内殻励起反応におけるマルチタイムスケールシミレーション
Project/Area Number |
19850027
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
今村 穣 Waseda University, 理工学術院, 助教 (60454063)
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Keywords | 内殻励起 / CVR-B3LYP / 高速化 / エネルギー分割 / 時間発展 |
Research Abstract |
本研究では、内殻励起をトリガーとした化学反応の全過程を扱えるマルチタイムスケールの理論枠組みを構築し、反応制御の指針を提案することを目的としている。本年度は、最近櫻井と杉浦により提案された射影法を用いて、内殻励起状態を効率的に求める手法を開発した。この手法は求めたい特定のエネルギー領域の解だけを求めることが可能であり、励起エネルギーが元素によりおおよそ予測可能な内殻励起に適した手法である。この手法を、シトシン分子の窒素の1s軌道からπ軌道への内殻励起に適用した。計算精度を維持したまま、計算時間を従来法に対して30倍以上も短縮することに成功した。得られた結果からイミンを形成している窒素は、単結合の窒素とは異なる内殻励起エネルギーを与えることを明らかにした。この理論の開発により、大規模な内殻励起計算が可能になった。また、本研究を遂行するにあたり、内殻励起に伴うエネルギー変化を解析することも重要である。その解析に適したエネルギー密度解析の開発を行った。まず、化学的直感に基づくLewis構造を再現するNBO基底を用いた解析(NBO-EDA)が行えるようにした。このNBO-EDAをDiels-Alder反応に適用し、MP2とCCSD法における生成エンタルピー、活性化エネルギーの差を解明することに成功した。また、σ、π軌道における電子相関の違いを明らかにした。更に、グリッド上の相関エネルギー密度の見積もりを可能とする手法の開発も行った。これをメタンーエチレン分子間のファンデルワールス相互作用に適用し、基底関数として用いられる分極関数および分散関数の役割を明らかにした。これらの理論の開発により、内殻励起に伴うエネルギー移動の詳細な解析が可能になった。
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Research Products
(19 results)