2008 Fiscal Year Annual Research Report
超音波計測および計算力学解析による脈波伝搬に伴う血管壁の運動に関する研究
Project/Area Number |
19860011
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
福井 智宏 Kyoto Institute of Technology, 工芸科学研究科, 助教 (00451542)
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Keywords | 計測工学 / 脈波伝搬 / 流体-固体連成解析 / 超音波計測 / バイオメカニクス |
Research Abstract |
動脈硬化症は血管壁肥厚および粥腫形成を伴う重篤な疾患であり,早期発見ならびに適切な治療を施すためには,動脈硬化症の発症と病変部位の進展のメカニズムの解明が必要である.本研究では,左心室の収縮に伴う血管壁の振動ならびに,時間的・空間的に複雑な血液流れを,超音波計測と計算力学解析の双方から詳細に調べ,動脈硬化症の発症と病変部位の進展に関わる要因を生体力学的に考察した. 1.超音波計測 脈波伝播に伴う血管壁の運動を詳細に計測するために,ブロックマッチング法を用いた血管長軸方向速度推定を行った.ブロックマッチング法における補間信号本数ならびにフレーム間隔が,推定される長軸方向速度波形に与える影響を調べるために,血管を模擬したシリコーンチューブを用いた水槽実験を行った.これにより,バイアスエラーおよびランダムエラーが最も小さくなる最適パラメータを決定し,それらを用いて,ヒト頸動脈のin vivo計測を行い,高解像度血管長軸方向速度波形を得た. 2.計算力学解析 in vivo超音波計測波形を基に,脈波伝播の流体-固体連成解析を行った.簡単のために,十分に長い直円管モデルを使用し,流体と固体との離散化の結合にはALE定式化を用いた.入り口に単一の矩形波を与え,脈波伝播に伴う壁面せん断応力を見積もった.その結果,血管壁の振動により発生した互いに伝播速度の異なる縦波と横波により,壁面せん断応力は時間的・空間的に分布を持つことが分かった.特に,末梢側で生じた反射波が入射波と重なり合う点において,血管壁の運動が壁面せん断応力に与える影響が最大となり,約1.0Paに及ぶ可能性が示された.この大きさは生体力学的に有意であった. 以上の研究報告を行った国内学会(平成20年度電気関係学会東北支部連合大会,郡山)において,優秀論文賞Bを受賞した.
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