2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19860019
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
溝上 陽子 Chiba University, 大学院・融合科学研究科, 助教 (40436340)
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Keywords | 色覚 / 色の恒常性 / 心理物理学 / 視覚情報処理 / ナチュラルネス |
Research Abstract |
本研究では,安定した色知覚のためには空間、照明認識,環境のナチュラルネスが大きく関わることを示すため,視空間のナチュラルネスが色の恒常性に与える影響を検討している。当該年度は,空間の構成を不自然にして通常の空間、照明認識が出来ない場合,色の恒常性の成立度が低くなることを示した。実験は,窓を介して奥行き方向に並んだ2つの小部屋と被験者室で構成されるブースで行われた。奥の部屋(後室)は昼白色,手前(前室)は電球色で照明された。被験者は観察窓を通して,室内と各室中央に置かれた色判定用のテストパッチを観察した。観察条件は自然条件と,万華鏡形式の観察ボックスを通して部屋を見る不自然条件の2種類である。不自然条件においては,周辺視野の配置は置き換わるが,視野中央のテストパッチと隣接する背景は自然条件と全く同じである。すなわち同時対比や視野の色平均は同等に保たれており,条件間の違いは空間的構成のみである。実験では,各観察条件において前室または後室に置かれたテストパッチの色判定を行った。呈示されるテストパッチは黒体軌跡上を段階的に変化する色系列の中から選ばれた。被験者は各パッチに含まれる色みを,Red,Yellow,Blue,Greenを用いて答えた。被験者の応答を分析し,色系列のうちRYとBGの判定が拮抗する点をニュートラル知覚とした。結果は,前室においては,不自然条件では自然条件よりもニュートラル知覚が昼白色方向にシフトした。これは予測どおり色の恒常性の成立度が低くなったことを示す。後室の場合は観察条件による差はなかった。これは,不自然条件では隣接する背景である昼白色照明が色の見えに大きく影響することを示唆している。以上の結果から,複数の照明下では,視空間のナチュラルネスが高いほど色恒常性の成立度も高くなることが確かめられた。
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