Research Abstract |
1. 土砂流出ポテンシャルパワー算定のためのデータベースの構築(H19年度からの継続) H19年度から整備されてきた単位流域,水系網,高度分布,平均降水量分布に加えて,地質分布を追加した.地質分布は産業技術総合研究所の「シームレス地質図」を基にしている.更に,土砂流出ポテンシャルパワーPの計算にあたり,支川の合流順序を考慮し,水系内の任意地点におけるPの算定を可能にする合成面積高度曲線を提案し,主な一級河川水系について合成面積高度曲線を整備した. 2. 土砂流出ポテンシャルパワーと土砂流出量との関係の把握 全国の主なダム約300におけるPと,堆砂資料を基に算定した土砂流出量Qsとの関係を調べた.その結果,全体の傾向としてQsはPの-0.6乗に比例していることが分かり,従来の研究による流域面積AによるQsの評価を,流域形状,高度分布,降水量分布から求まる降水の年平均位置エネルギー(土砂流出ポテンシャルパワーP)という物理的な指標によるQsの評価として整理することができた. 3. 地質別土砂流出傾向の把握 全国の地質をその成因によって,堆積岩類,付加コンプレックス,火山岩類,変成岩類,深成岩類の5種類に大別し,それぞれ面積高度曲線の特徴を調べた結果,流域高度分布は地質成因に則した特徴を備えていることが確認できた.また,ダム貯水池でのPとダム集水域内に占める各地質の割合と,年平均堆砂量とを比較した結果,中部地方では火山岩類が,中央構造線沿いでは付加帯コンプレックスのPが卓越しており,地域による特徴を把握することができた.また,揖斐川上流域において,砂防ダム集水域でのQs-Aの関係を調べた.この流域は,美濃帯と呼ばれるチャートを主体とした付加コンプレックスが広く分布し,周辺の他の地質と比較して大きい土砂流出傾向があることが確認できた.
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