2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19860093
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
全 伸幸 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計測フロンティア研究部門, 特別研究員 (20455439)
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Keywords | TOF-MS / ESI / プロテオミクス / 高速パルス発生器 / PSD / 超伝導検出器 / STJ / 計測工学 |
Research Abstract |
プロテオミクス研究が対象としている生体分子は事実上無数にあり、特に大きな質量を持つ生体分子の構造・機能の解明が急務である。飛行時間型質量分析装置(TOF-MS:Time Of Flight-Mass Spectrometer)において通常用いられる検出器が測定できる質量は高々数十万であるが、検出部に超伝導トンネル接合素子(STJ:Superconducting Tunnel Junction)を組み込むことによって、数百万を超える質量を有する生体分子の観測をも可能にする。本研究においては、検出面積と検出速度を両立させるといった観点から、100素子アレイ型STJを用いる。まず、100素子アレイ型STJを動作させるためには、極低温で使用可能な100本の配線基板が必要となるが、本研究においては、ノイズ特性の向上といった観点から、STJ搭載用セラミック基板を開発した。装置中の極低温検出部(0.3 K)に搭載済みであり、極低温において破断等が生じないことを確認した。また、STJは接地電位で動作させる必要があるため、装置のポテンシャルリフトを行わなくてはならない。具体的には、負の高電圧にフロートされているTOF-MSの飛行管を接地し、その代わりにイオン加速部に高電圧パルスを印加し、生体分子イオンをSTJ検出部まで到達させる。単純な生体蛋白質のひとつであるリゾチーム(分子量:14,351)に対してポテンシャルリフトを行い、検出器にMCPを用いたところ、信号を取得することに成功した。得られた質量分解能は100であった。 一方、本研究では質量分解能の向上も目指しており、電場勾配型イオン加速法を提唱している。当該加速法は、高速な立ち上がり時間と立下り時間を有する高電圧パルスが必要であるが、高電圧パルス発生器に改造を施すことにより、立ち下がり時間が150μsから30μsに向上した。
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