2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19870002
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
廣田 忠雄 Yamagata University, 理学部, 准教授 (00431635)
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Keywords | 性的対立 / 精子競争 / 交尾後ガード / 飛翔筋多型 / 甲虫 |
Research Abstract |
オオヒラタシデムシを対象に、繁殖行動における性的対立を調査した。シデムシ類は、交尾時にオスがメスの触角を強く噛む行動が特徴的で、しばしばオスが触角を噛み切ると記載されていた。しかし本種の生態はほとんど調査されておらず、配偶行動に関する定量的な解析は皆無だった。そこで、実験室で詳細に観察した結果、配偶行動はオスがメスにマウントすることで始まり、その直後にオスがメスの触角を噛み、挿入を開始することが分かった。しかし中には、メスが交尾器を下に折り曲げたため、挿入に至らないオスも多くみられた。オスはマウント直後に挿入できなくても、数十分にわたってマウントを継続したが、挿入できた例はほとんどなかった。このように、挿入の有無はメスに決定権があり、オスが強制できるものではなかった。一方、挿入に成功したオスは、挿入後も平均で数時間、最大20時間以上マウントを継続した。このようにオスは、精子競争を回避するために、交尾後ガードを行なうと考えられる。事実、観察ケージに多数のオスを入れてオス比を高めた場合、マウント時間が1時間以上延びた。だが、ここまで観察したのべ数百の交尾対を通じて、『オスがメスの触角を噛み切る』現象は全く観察されなかった。触角を噛み切る現象はあったとしても、その頻度は非常に低いことが分かった。むしろ触角はオスがメスを長時間拘束する上で、欠かせないものと思われる。事実、あらかじめ触角を切断したメスとの交尾では、交尾後ガードが平均2時間半短くなっていた。交尾中メスは頻繁にオスを振り落とそうとすることからも、触角を噛むことでオスが対抗していると推定される。加えて、野外で多数の個体を採集し解剖した結果、発達した飛翔筋を持つ個体がほとんどいない局所個体群と、多数を占める局所個体群が発見された。本種の繁殖戦略を考察する上でも重要な発見となった。
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Research Products
(5 results)