2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19870018
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高野 義人 Nagasaki University, 環東シナ海海洋環境資源研究センター, 産学官連携研究員 (10435852)
|
Keywords | 分類学 / 系統進化 / 多様性 / 遺伝子 |
Research Abstract |
平成19年度9月から3月において、東シナ海海域(長崎県五島列島周辺海域)の合計30サンプルを検鏡した。その中から、主にCeratium属について29種68細胞、藍藻を細胞外共生体として持つものについて12種23細胞を観察・単細胞PCR処理を行った。日本における定期的な外洋性渦鞭毛藻類の出現調査・観察記録はなく、今回の結果は東シナ海日本周辺域における外洋性渦鞭毛藻類相とその多様性を示す、また、各種の季節的消長をも示すものとして重要であると言える。 現在までに、Ornithocercus属について得られたDNA配列に基づく分子系統解析を行った。貧栄養な外洋では、藍藻類とプランクトン性真核生物の共生関係が見られる。そのうちの一つとして、ディノフィシス目に属するOrnithocercus属が知られている。これまで、Ornithocercus属の共生藍藻についてのDNA配列解析・TEM観察は行われており、その多様性や一つのホストに複数の藍藻が共生していることが示されているが、ホスト細胞についての研究はない。これまで解析をおこなったところまでで、Ornithocercus属3種(O.magnificus・5細胞、O.steinii・2細胞、O.thurnii・2細胞)について、光学顕微鏡観察を行った後に、ホストの18SrDNAとITS領域、共生藍藻の16SrDNAの配列を決定した。まず、ホストの18SrDNA配列の解析結果から、Ornithocercus属は単系統群となり、ディノフィシス目のタイプであるDinophysis属と姉妹群関係となった。これにより、Ornithocercus属のディノフィシス目への所属の妥当性が初めて示された。また、18SrDNA配列ではほとんど変異が無く種の識別は行えなかったが、ITS領域を用いた系統解析の結果、3種はそれぞれ単系統群となった。また、O.magnificusでは、2つのクレードに分かれ、それぞれに形態的差異が認められた。共生藍藻の分子系統解析の結果、今回得られたサンプルでは一つのホスト細胞のものからは単一の配列が得られ、その系統樹の樹形はホストの樹形と一致しており、ホストと共生藍藻との種特異性が示された。
|