2008 Fiscal Year Annual Research Report
雑種形成に着目した生物多様性の進化維持機構の理論的研究
Project/Area Number |
19870022
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
瀧本 岳 Toho University, 理学部, 講師 (90453852)
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Keywords | 雑種 / 種分化 / 生物多様性 / 超越分離 / 個体ベースモデル / 種分化の逆転 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、雑種形成が生物多様性の進化・維持を駆動しているプロセスを明らかにすることである。雑種形成によって種の多様性は、増える場合も減る場合もある。近縁種が交雑し融合して「種分化の逆転(speciation reversal)」が起こると種多様性は下がるだろう。逆に、雑種個体群が第三の種として確立し「雑種種分化(hybrid speciation)」が起こると種多様性は上がるだろう。 当該年度は、同所的に分化した起源をもつ親種の間で雑種形成があった場合に雑種種分化が起こる可能性を、個体ベースシミュレーションモデルを開発・解析することによって、理論的に検討した。同所的起源をもつ親種からの雑種種分化のシナリオとして次のようなものを考えた。(1)まず、分断型自然選択と同類交配により、異なるニッチに適応した親種が同所的に進化する。(2)その後、環境変動により親種のニッチの環境収容力が変化し、親種のニッチと比べてより極端な環境に別の新たなニッチが創出される。(3)環境収容力が低下し個体数の少なくなった親種は同種の交配相手と出会う機会が減り、もう一方の親種と交配し雑種を形成する。(4)新たなニッチで適応的な雑種個体が超越分離により出現し同類交配を進化させ、第3番目の種として確立する。 シミュレーションモデルの解析の結果、同所的起源をもつ親種の間では(4)のプロセスが機能しないことがわかった。その理由は、同所的起源をもつ親種の間では、雑種をつくったときに超越分離が起こるような遺伝的分化が生じないためだと考えられた。この結果は、より近縁な種間での雑種形成ほど、超越分離による雑種種分化が起こりにくいということを示唆している。
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