2007 Fiscal Year Annual Research Report
ボルボックス胚の形態形成運動における細胞突起形成機構の解明
Project/Area Number |
19870037
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
豊岡 博子 The Institute of Physical and Chemical Research, 西井独立主幹研究ユニット, ユニット研究員 (00442997)
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Keywords | 形態形成運動 / 細胞変形 / 緑藻類 / ボルボックス / フラスコ型細胞 / 細胞突起 / クラミドモナス / インバージョン |
Research Abstract |
ボルボックス胚の形態形成運動(「インバージョン」)は、多細胞生物の発生において重要な役割を担う細胞シートの反り返り現象の一つのモデルである。インバージョンを引き起こす細胞レベルのイベントの一つに、細胞が変形し突起を形成する現象が挙げられる。本研究課題は、この細胞突起が形成されるメカニズムの解明を目的とし、申請者らが同定したこの現象に関与する新規タンパク質InvDの作用機序の解析を行う。平成19年度後半は、主にInvDタンパク質の発現解析と細胞内局在解析を行った。具体的にはInvD欠損変異株に対して形質転換を行ってInvD-HA融合タンパク質発現株を作製し、この株において抗HA抗体を用いた解析を行った。ウェスタンブロットによる発現解析の結果、InvDは細胞分裂期後期からインバージョン期にかけて高い発現レベルを示し、インバージョン後は消失することが分かった。また免疫染色による細胞内局在解析の結果、InvDはインバージョン期において微小管に類似した局在パターンを示した。また細胞突起の先端にInvDの局在が観察される場合もあった。インバージョン後の胚では、インバージョン前やインバージョン中の胚と比較してInvDのシグナルが著しく低下していた。インバージョン時の細胞突起形成には、微小管の重合が必要であることが知られている。また、細胞突起はインバージョン期にしかみられない一時的な構造である。本研究の結果、InvDは微小管の重合や安定化に機能し、インバージョン終了後速やかに分解されることで細胞突起の消失に寄与している可能性が示唆された。多細胞生物の形態形成運動に伴って細胞が変形する現象は、様々な生物種で普遍的に見られる現象であり、InvDという新規タンパク質が微小管を介してこの現象を制御しているという可能性は、発生生物学研究において重要な意義があるといえる。
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