2007 Fiscal Year Annual Research Report
酸味受容体候補PKD1L3/PKD2L1の分子細胞生物学的解析
Project/Area Number |
19880008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石丸 喜朗 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (10451840)
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Keywords | 味覚受容体 / 酸味 / TRPチャネル / シグナル伝達 |
Research Abstract |
味覚系は、ヒトを含め動物にとって、食物の栄養価(糖、アミノ酸含量)、毒性(苦味強度)、塩濃度、酸性度(腐敗度)を評価するための重要な外部化学感覚である。本研究では、研究代表者らが世界に先駆けて発見した酸味受容体候補PKD1L3/PKD2L1が、実際にin vivoで哺乳類の酸味受容体として機能するか解明することを目的として、PKD1L3やPKD2L1遺伝子破壊マウスを作製した。作製に成功したPKD1L3とPKD2L1のホモ変異マウスは、いずれも生存可能で、発育も野生型と違いが見られなかった。また、味細胞の形態とPKD1L3やPKD2L1以外の味細胞マーカー分子の発現も正常であった。現在、これらの変異マウスが、酸味や他の味覚受容に関してどのような表現型を示すかを行動学的、電気生理学的手法を用いて引き続き解析を行っている。 味蕾細胞は、電顕観察による細胞形態と細胞内微細構造に基づいて、紡錘形をしたI型、II型、III型細胞と基底部に存在する丸型のIV型細胞に分類される。しかし、それぞれの細胞型がどのような機能的性質を持つか不明であった。PKD2L1を発現する酸味受容細胞と電顕観察による分類との対応付けをするために、抗PKD2L1抗体と各細胞型のマーカー分子に対する抗体との二重免疫染色を行った。その結果、PKD2L1陽性細胞は、NCAMなどのIII型細胞のマーカー分子と発現がほとんど重なった。一方、NTPDase2、PLCβ2などのI型やII型細胞のマーカー分子とは重ならなかった。すなわち、III型味細胞は酸味を受容する細胞であり、II型味細胞は甘・苦・うま味を受容する細胞であることが分かった。この研究成果は、味蕾細胞の細胞形態と細胞機能とを結びつけることができたという意義がある。
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