2007 Fiscal Year Annual Research Report
XAFSによる化学形態情報を用いたバイオミネラルへの微量元素濃集過程の解明
Project/Area Number |
19880010
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
津野 宏 Yokohama National University, 教育人間科学部, 講師 (60432069)
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Keywords | バイオミネラル / 炭酸カルシウム / 微量元素 / X線吸収微細構造 / 固-液平衡 |
Research Abstract |
本研究は、バイオミネラリゼーションの結晶生成過程に着目し、X線吸収微細構造(XAFS)による微量元素の化学形態情報の解析を行うことで、生体内での微量元素の挙動・濃縮・隔離過程を理解することを目指している。まず、本年度は、無機的な炭酸カルシウムの生成をバイオミネラル形成の素反応として捉え、無機的な沈殿生成による結晶への微量元素の取り込まれ方・微量元素による炭酸カルシウムの固-液平衡状態の変化を系統的に解析するために、化学的な性質が類似しているが系統的にイオン半径が変化する希土類元素を不純物として添加した炭酸塩の合成実験を中心に研究を実施した。カルシウムイオンのイオン半径(6配位で1.00Å)より大きいイオン半径を持つLa(6配位で1.05Å)において、きわめて高い溶解度の上昇効果を示した。しかしながら、希土類元素イオンの性質は類似しているにもかかわらず、イオン半径がわずかに小さな希土類元素(Ce,Pr,Nd)を添加した系では、イオン半径が小さくなるにし従い、系統的に溶解度の上昇効果が減少した。さらに、イオン半径が0.96Åより小さい希土類元素(Sm以降)では、炭酸カルシウムの溶解平衡に与える効果が一切みられなくなることが示された。これは、不純物イオンの影響はその化学的性質に加え、イオン半径による影響が大きいことを示している。本年度は装置が整備途上であったため微少量の結晶サンプルのX線回折による解析、結晶に含まれる不純物の定量分析や存在状態解析ができなかったが、今後、結晶の解析を行うことで、次年度計画している二枚貝を飼育することで得られる貝殻中に取込まれた不純物の存在状態との比較を可能にし、バイオミネラルへの微量金属の濃集課程を議論することができるようになると考えている。
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