2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19880029
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
川井 清司 Tokyo University of Technology, バイオニクス学部, 助教 (00454140)
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Keywords | ガラス転移 / アモルファス / 熱分析 / エンタルピー緩和 / 非平衡状態 |
Research Abstract |
殆どの乾燥食品はアモルファス状態にあり、水分含量や温度の変化によってガラス状態になる。ガラス状乾燥食品の様々な性質を制御するには、時々刻々と変化し得る非平衡状態について理解しなければならないが、そのような試みはこれまでに殆ど無かった。本研究の主たる目的は、ガラス状乾燥食品の非平衡状態を、示差走査熱量計を用いた緩和エンタルピー(ΔHrelax)測定によって評価し、様々な物性制御への利用について検討することである。本年度は基礎知見の集積を目的とし、様々な温度で乾燥させたモデル系乾燥食品のΔHrelaxを調べた。モデル系食品として、マルトデキストリン-水混合物とマルトース-水混合物とを用い、これらを50℃〜100℃の範囲で重量がほぼ一定になるまで乾燥させた後、水分収着を妨げながら室温まで冷却することで試料を得た。いずれの乾燥温度においても、マルトデキストリンのガラス転移温度は乾燥温度よりも高かったことから、乾燥過程でガラス状態になることが分かった。これらの試料は常に正のΔHrelax値を示したことから、平衡から大きく逸脱した非平衡状態に陥っていたことが示唆された。また、乾燥温度がΔHrelax値に及ぼす影響は殆ど無かった事から、マルトデキルトリンは乾燥温度によらず、ほぼ同程度に平衡から逸脱した非平衡ガラス状態になることが明らかとなった。一方、マルトースのガラス転移温度は乾燥温度よりも常に低かったことから、乾燥過程ではなく、乾燥後に試料温度を室温まで冷却させる過程でガラス状態に陥ることが分かった。ガラス状マルトースの非平衡状態は乾燥温度ではなく乾燥終了後の冷却速度によって、変化し得ることが示唆された。以上の研究成果より、ガラス状乾燥食品の非平衡状態をΔHrelax測定によって特徴付けることが可能なことが明らかとなった。
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