Research Abstract |
本研究では,イノシトール3リン酸受容体タイプ1(IP_3R1)の制御機構を明らかにする目的で,卵減数分裂進行に関わる諸因子(Plk1, CDK1,およびMAPK)の新規役割を検討した.その結果,卵核胞崩壊(GVBD)以降の卵においてPlk1, IP_3R1量は変化しなかったが,リン酸化Plk1,リン酸化IP_3R1量は著しく増加した,またwortmanninで処理した卵では,リン酸化Plk1,リン酸化IP_3R1の増加は抑制されたが, IBMXとオカダ酸の複合処理区では, CDK1活性は抑制されたが, MAPKは活性化し,リン酸化Plk1量,リン酸化IP_3R1量の増加も認められた.恒常的活性化型Plk1 cRNAを注入した区の卵は,卵核胞期(GV期)で停止していたにも関わらずリン酸化IP_3R1の増加が認められた.一方,ドミナントネガティブ型Plk1 cRNAを注入した区の卵は,内在性のPlk1は活性化していたにも関わらず,リン酸化IP_3R1量の増加は認められなかった. Plk1抗体, IP_3R1抗体で免疫沈降した区においてそれぞれIP_3R1, Plk1が検出され,その量はMIIで多く,間期の卵では少なかった. Plk1とIP_3R1はGVBD以降,紡錘体付近に供に局在していた.一方, UO126区ではPlk1およびIP_3R1の局在には異常が見られた.以上のことから,卵はGVBD以降において, Plk1がIP_3R1を直接リン酸化していること,またMAPKはIP_3R1の局在を制御していることが明らかとなった.本研究により,減数分裂進行に重要なPlk1の受精時における新たな役割を初めて明らかにした.この知見は,受精メカニズムの解明だけでなく,顕微授精や核移植時の胚発生能の改善にも大きく貢献できると考えられる.
|