2008 Fiscal Year Annual Research Report
塩害水田において高い収量を維持するイネ突然変異系統の耐性機構と原因遺伝子の解明
Project/Area Number |
19880038
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹久 妃奈子 The Institute of Physical and Chemical Research, 生物照射チーム, リサーチアソシエイト (20455356)
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Keywords | 塩害耐性 / 突然変異体 / イネ / マッピング / 収量 / 毅粒品質 |
Research Abstract |
申請者は、野外の塩害水田において高い収量と毅粒品質を維持できる突然変異系統6-99Lの塩害耐性機構と原因遺伝子を明らかにすることを目的とし、研究を進めてきた。平成20年度は1)原因遺伝子の優劣性の解明およびマッピングと、2)原因遺伝子を含む関連遺伝子群の発現解析を行った。1)昨年度作成した日本晴(WT)と6-99Lの戻し交配後代33個体を用いた優劣性解析の結果、25:8(感受性:耐塩性)に分離したことから、原因遺伝子が劣性1遺伝子である可能性が示唆された(x^2=0.05,P=0.94)。また、6-99Lの耐塩性の指標である塩害水田における草丈、1000粒重、一穂粒数と整粒歩合の高さには正の相関が確認されたことから、これらの耐塩性形質が同一遺伝子座に由来する可能性が示された。カサラス(インディカ品種)と6-99Lの交配後代を用いたマッピング実験から、6-99Lの耐性遺伝子座は第6染色体に座上することが考えられた。2)6-99Lの耐性機構と耐性遺伝子を推定するため、塩ストレスに応答すると言われている浸透圧ストレス、Na^+ストレスおよび酸化ストレス応答機構に関与する遺伝子の発現解析を行ったが、WTと大きな違いは確認されなかった。 本申請課題では、世界で初めて作出された、塩害水田で高い収量と毅粒品質を維持することができる突然変異系統を用いてきた。申請者は、本研究課題を遂行することにより、塩害水田におけるイネの耐塩性は、1遺伝子を調節することによって付与することが可能であり、その1遺伝子は、浸透圧ストレス耐性機構に関与し(昨年度の実験結果より)、第6染色体に存在することを初めて示した。
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