2007 Fiscal Year Annual Research Report
2型糖尿病の病態形成における膵β細胞ストレス応答異常とインスリン抵抗性の連関
Project/Area Number |
19890018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山口 賢 Tohoku University, 国際高等研究機構, 助教 (70451614)
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Keywords | 小胞体ストレス / 翻訳制御機構 / 糖尿病 / 膵β細胞 |
Research Abstract |
膵β細胞量の低下の原因として、小胞体ストレスによる膵β細胞死が注目されている。細胞は、小胞体ストレスが加わると、小胞体ストレス応答という一連の反応によって対処するが、処理限界を超えると細胞死・アポトーシスが誘導される。 私は、今年度、筆頭著者として、翻訳抑制因子であるEukaryotic initiation factor 4E-binding protein 1(4E-BP1)が小胞体ストレスから細胞を保護していることを、以下の実験により、Cell Metabolismという権威の高い学術雑誌に報告した。 我々は、まずマウスの膵島やマウスの膵β細胞株であるMIN6細胞において、小胞体ストレス刺激により、4E-BP1蛋白が増加することを発見した。次に、4E-BP1が、転写因子であるATF4によって誘導されることを明らかにし、4E-BP1遺伝子上のATF4の結合部位を同定した。4E-BP1を欠損させた膵β細胞株を作製し、野生型細胞との比較実験を行った。その結果、4E-BP1欠損MIN6細胞は、翻訳抑制機構の破綻が原因で小胞体ストレスに脆弱であり、アポトーシスが亢進することが分かった。さらに生体での4E-BP1の作用を明らかにするため、膵β細胞に小胞体ストレスをきたす糖尿病モデルマウスと4E-BP1欠損マウスを交配させた。作製されたマウスにおいても翻訳抑制機構が破綻しており、膵β細胞の障害がさらに亢進していた。慢性的な小胞体ストレス下にある膵β細胞において、さらに4E-BP1の欠損を欠損させたことにより、膵β細胞の障害がさらに増強されていると考えられた。 4E-BP1は、新たな2型糖尿病の治療の標的としての可能性をもった蛋白である。今後、分子機構をさらに解明することで、治療や創薬への発展を目指す。
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[Journal Article] The Translational Repressor 4E-BP1 is Induced by ATF4 and Plays a Role in Maintaining Pancreatic β Cell Homeostasis under Endoplasmic Reticulum Stress2008
Author(s)
Suguru Yamaguchi, Hisamitsu Ishihara, Takahiro Yamada, Akira Tamura, Masahiro Usui, Ryu Tominaga, Yuichiro Munakata, Chihiro Satake, Hideki Katagiri, Fumi Tashiro, Hiroyuki Aburatani, Kyoko Tsukiyama-Kohara, Jun-ichi Miyazaki, Nahum Sonenberg and Yoshitom Oka
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Journal Title
Cell Metabolism 7(3)
Pages: 269-276
Peer Reviewed
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