Research Abstract |
中枢神経軸索は傷害を受けると再生しない。中枢神経が傷害を受けた際に,中枢神経軸索の再生を阻害する因子の一つとしてRGMaが同定されている。RGMaは,中枢神経傷害時にニューロン,オリゴデンドロサイトに加えて,免疫細胞の一種であるミクログリア/マクロファージにおいても発現上昇する。この結果より,本研究課題ではRGMaが免疫細胞にどのような効果を示すかを検討し,以下の結果を得た。1、抗原提示細胞(樹状細胞,マクロファージ)におけるRGMaの発現をmRNA,蛋白質レベルで確認し,LPSによる活性化に伴うRGMaの発現上昇を認めた。2、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージにおいてRGMaの受容体であるneogeninの発現を確認し,またそれら細胞に対するRGMaの結合をフローサイトメトリーにて確認した。3、RGMaはCD4陽性T細胞ならびにマクロファージにおいて,細胞内シグナル分子の一つであるRap1の活性化を誘導した。4、Rap1が媒介する細胞機能として,細胞接着性の向上が報告されている。そこで,CD4陽性T細胞ならびにマクロファージを含む脾臓細胞にRGMaを作用させたところ,脾臓細胞の細胞接着性の向上を認めた。以上の結果は,免疫反応の初期段階において,抗原提示細胞由来のRGMaが,CD4陽性T細胞ならびにマクロファージに作用しその接着性を向上させる事で,免疫反応を亢進する可能性を示唆する。今後,免疫反応の過剰な活性化に伴い誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎などの動物モデルを利用して,免疫反応におけるRGMaの役割を解析し,過剰な免疫反応を原因とする多発性硬化症などの中枢神経での自己免疫疾患の治療に対する手がかりを得たい。
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