2008 Fiscal Year Annual Research Report
軸索進展阻害因子RGMaの免疫細胞における機能の解明
Project/Area Number |
19890044
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久保 武一 Chiba University, 大学院・医学研究院, 助教 (80451756)
|
Keywords | 脳・神経 / 神経疾患 / 神経科学 / 免疫学 / 中枢神経傷害 / 神経免疫 |
Research Abstract |
中枢神経軸索は一度損傷すると再生しないが、その原因の一つとして中枢神経軸索の再生を阻害する因子repulsive guidance molecule(RGMa)が同定されている。RGMaは、中枢神経傷害時にニューロン、オリゴデンドロサイトのみならず、免疫細胞の一種であるミクログリア/マクロファージにおいても発現上昇する。この観測結果から、本研究課題ではRGMaが免疫細胞にどのような効果を示すかを検討し、昨年度に以下の結果を得た。1、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ)において活性化にともないRGMaの発現上昇を認めた。2、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージにRGMaが結合することをフローサイトメトリーにて確認した。3、RGMaはCD4陽性T細胞ならびにマクロファージにおいて、細胞内シグナル分子であるRhoAならびにRap1の活性化を誘導した。4、RhoAならびにRap1が媒介する細胞機能として、細胞接着性の向上が報告されているが、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージを含む脾臓細胞にRGMaを作用させたところ、脾臓細胞の細胞接着性の向上を認めた。以上の結果は、抗原提示細胞由来のRGMaが、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージに作用し免疫反応を活性化する可能性を示唆する。そこで本年度、過剰な免疫反応により誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を利用して生体内免疫反応におけるRGMaの役割を解析した。その結果、RGMaの作用を抑制する抗RGMa抗体投与により、過剰な免疫反応の抑制が認められ、EAE病態の改善が、行動学的、病理学的に観察された。本結果は、RGMaが生体内での免疫反応の活性化に関与することを強く示唆しており、またRGMaが過剰な免疫反応を原因とする多発性硬化症などの中枢神経での自己免疫疾患の治療標的となりうることを示唆する。
|