2007 Fiscal Year Annual Research Report
腸管特異的Notch標的遣五子の探索による粘膜再生療法の開発
Project/Area Number |
19890064
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 隆一 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (50451935)
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Keywords | 腸管上皮 / Notchシグナル / 杯細胞 / 炎症性腸疾患 / 粘膜再生 |
Research Abstract |
本研究では炎症性腸疾患炎症部に特異的な上皮分化様式を端緒に、同疾患にける腸管上皮再生の分子機構の解析を遂行している。1)腸管炎症粘膜におけるNotchシグナルの重要性:潰瘍性大腸炎病変部の免疫組織学的解析によりa)ヒト腸管粘膜に於いて、活性型Notch及びその標的遺伝子Hes1は陰窩内の上皮細胞に限局して発現が確認された。b)潰瘍性大腸炎病変部の陰窩においては杯細胞の著しい減少と一致して同部位の上皮におけるNotchの広範な活性化が確認された。2)ヒト腸管上皮細胞における活性型Notch1の分子機能の解明:ヒト大腸癌由来培養細胞株に於ける誘導発現系を用いてNotchシグナル活性化がヒト腸管上皮細胞分化に与える影響を解析した。その結果、a)ヒト大腸癌由来細胞株に強制的にNotch活性化を誘導する事により、杯細胞特異的遺伝子MUC2発現の著しい減少が誘導され、粘液分泌能も著しい低下が確認された。b)同様のNotch活性化を誘導する事によりバネート細胞特異的遺伝子PLA2G2Aの発現及び分泌の亢進が誘導された。3)腸管粘膜再生におけるNotchシグナルの重要性の解明:デキストラン硫酸投与による大腸炎誘導モデルマウスにNotchシグナル阻害薬を投与し、その効果を組織学的に解析した。その結果、a)Notchシグナル阻害薬によりデキストラン硫酸誘導腸炎の著しい増悪と個体死亡率の上昇が誘導された。b)Notchシグナル阻害薬は非炎症部腸管に於ける杯細胞分化を促進する効果を有する一方、炎症部腸管に於いて細胞増殖を著しく抑制する効果を有していた。同効果により、炎症により傷害された粘膜上皮の再生反応は著しく抑制された。これらの成果は、難治性炎症性腸疾患における上皮再生機構を分子レベルで解明した画期的知見であり、同疾患における粘膜再生治療の開発に重要な基盤を提供するものである。
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