2007 Fiscal Year Annual Research Report
前立線癌骨転移形成に間わる癌-骨細胞間微小環境の解析と分子標的治療の確立
Project/Area Number |
19890084
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北川 育秀 Kanazawa University, 医学部附属病院, 助教 (00452102)
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Keywords | 前立線癌 / 転移性骨腫瘍 / 癌骨細胞間環境 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
前立腺癌の特徴として,比較的早期から造骨性骨転移を起こすことが挙げられる。この現象は他の癌種が溶骨性骨転移を起こしやすいのと対照的であり,前立腺癌特有の癌細胞-骨細胞間の相互作用の存在が考えられ,骨転移の形成には様々な骨関連因子,増殖因子が関与していると考えられている。我々は,各因子を解明するとともに,総合的にとらえ,微少環境についての理解をすすめたいと考えて,研究計画を立案した。まず前立腺癌再燃モデルとして得られた前立腺癌細胞株LNCaP-SFをSCIDマウスの皮下および脛骨に接種することで前立腺再燃癌および前立腺癌骨転移の動物モデルを作成,樹立した。同時期に前立腺癌再燃患者のアレルギー疾患に対してトラニラスト(TRN)を投与し,癌進行が抑制された1例を経験したため,TRNの抗腫瘍効果および癌一骨細胞間環境について分子生物学的に検討した。in vitroにおいてTRNは濃度依存的に前立腺癌細胞株の増殖を抑制し,遺伝子および蛋白レベルでアポトーシス関連因子の発現を誘導した。さらに骨関連細胞に対しては濃度依存的にTGF-β1の産生を抑制した。TRNを投与しない状態では正常骨間質細胞より前立腺癌骨転移部間質細胞のほうがTGF-β1の産生量は多かった。in vivoにおいて皮下への移植,脛骨への移植いずれもTRN投与群はコントロール群と比較して有意に腫瘍の増殖が抑制された。以上の結果より,TRNには前立腺癌細胞に対するアポトーシスの誘導と,骨転移巣における間質細胞などに対するTGF-β1産生抑制とを介した抗腫瘍効果があることが示された。TGF-β1が前立腺癌一骨細胞間相互作用に関する因子であることが証明され,分子標的治療の対象になりうる可能性が示唆された。
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