2008 Fiscal Year Annual Research Report
C/EBPδ発現の腎障害進展に果たす役割に関する研究
Project/Area Number |
19890121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川田 典孝 Osaka University, 医学部附属病院, 助教 (80437326)
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Keywords | C / EBP / ステロイド / Lysyl oxidase(LOX) / 腎線維化 |
Research Abstract |
本研究では、臓器線維化進展へのC/EBPδの関与を解析することを目的とする。我々は、これまでに培養メサンギウム細胞および培養腎線維芽細胞において、ステロイド負荷がC/EBPδとβのmRNA発現を誘導するが、C/EBPα mRNAには影響しないこと、さらに核内のC/EBPδ蛋白発現も増加することを明らかとした。さらに、ステロイド負荷が培養細胞のTGFβやIL-6mRNA発現を低下させ、直接的な抗炎症作用をもたらしている可能性と、反対に、転写制御領域にC/EBP responsive elementを持つことが報告されているLysyl oxidase(LOX)の蛋白・mRNA発現を誘導することを明らかとした。この酵素はコラーゲン分子のクロスリンキングを促進することで、線維化の進展に関与することが知られており、臨床的に認められるステロイド投与に伴う臓器線維化・硬化の進展を説明する上で重要と考えられる。さらに、ステロイドによるLOXの誘導はmizolibinにより抑制されることを明らかとした。この結果は、ステロイドとmizolibinの併用療法の有用性を分子生化学的に説明する可能性を持ち、重要である。SiRNAを用いたC/EBPδmRNAの抑制ではステロイド負荷によるLOX誘導は抑制されず、LOXmRNAがC/EBPδ単独で誘導される可能性は否定的であった。このことから、ステロイド負荷によるLOX誘導には、C/EBPδが関与しない可能性と、C/EBPδとほかの転写因子、特にC/EBPβが共同して関与する可能性が示唆される。 本研究で得られた成果はステロイド治療による組織線維化、硬化進展機序の一端を明らかとすることで今後の治療への応用につながる可能性を持ち、重要である。
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