2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経再生時に炎症性サイトカインが及ぼす影響とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
19890123
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 啓之 Osaka University, 医学部附属病院, 特任助教 (00432542)
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Keywords | 再生医学 / 神経科学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
本年度は、「炎症性サイトカインがin vivoにて神経細胞に及ぼす影響とそのメカニズムの解明」について研究を行った。昨年度の研究において、in vitroではIL-1βはMAGなどの軸索伸展阻害物質の影響をブロックし、軸索を伸展させることを解明した。またラットの坐骨神経損傷モデルを作製し、IL-1βの発現を確認したところ、損傷部周囲にIL-1βの発現が上昇することもわかった。損傷後24時間をピークとして、7日後まで上昇していることが免疫染色およびウエスタンプロッティングで確認できた。このことから坐骨神経損傷後には、損傷部周囲に一過性にIL-1βの発現が上昇することがわかった。そこで、IL-1βが坐骨神経損傷後の軸索伸展に寄与しているという仮説を立て、本年度の実験を進めた。ラット坐骨神経損傷モデルを作成し、持続浸透圧ポンプを用いて2週間にわたりIL-1βの持続投与を行い、手術後12週間の経過観察を行った。感覚神経の機能回復について、IL-1βを投与した群においては、コントロール群と比べて優位に早期に回復が認められた。また組織学的検査において、軸索の数および面積について、IL-1β投与群において、コントロール群と比べて優位な増大を認めた。また、再生した軸索が正常に機能するためには再髄鞘化が必要であるため、再髄鞘化された面積について調べたところ、統計学的に優位な差は認められなかったものの、IL-1β投与群において、再髄鞘化が促進される傾向が認められた。以上のことから、IL-1βは末梢神経損傷後に、早期に損傷部周囲に発現が上昇することにより、軸索伸展阻害物質の影響をブロックし、神経損傷後の軸索伸展および再髄鞘化に寄与することが本研究により解明された。
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