Research Abstract |
近年,骨・歯の石灰化や異所性の石灰化と,シグナル分子としての無機リン酸(Pi)およびその代謝調節因子との関連性がクローズアップされている。本件は,低リン血症性骨軟化症くる病の臨床及び実験的研究所見から得られた(または推定された)Pi代謝調節機構に基づき,これを人為的に操作することで石灰化や細胞分化を調節できるか否か検証することを目的とした。本年度は,培養骨芽細胞の分化段階に応じたPi代謝調節機構を明らかにするために,ラット胎仔頭蓋冠由来(RC)細胞を用いて以下の通り実験を行った。 1.RC細胞の未分化な前駆細胞と成熟分化した骨芽細胞の2ステージにおいて,細胞外Pi濃度に対する応答の違いをMTTアッセイ,ALP活性,DNAラダー法などで比較検討したところ,前駆細胞でアポトーシス誘導,ALP活性低下を引き起こしたPi濃度に対して,成熟細胞ではそれらに抵抗性があることが確認された。また,この抵抗性はNaPiトランスポーター阻害剤の併用によって回避された。 2.既知のPi代謝調節因子の発現制御についてPi濃度との関連性を調べたとこる,成熟細胞において,FGF23の発現がPi濃度依存的に増加し,それに伴って石灰化が抑制されることが明らかとなった。また,その発現は同じくPi代謝調節因子である活性型ビタミンDと副甲状腺ホルモン(PTH)によって調節されることが確認された。このFGF23の発現をsiRNAによりノックダウンしたところ,FGF23による石灰化抑制に回復がみられた。 以上の結果を踏まえ,来年度は,Pi代謝調節因子の発現制御及びその機構について,未分化細胞と成熟細胞固有の細胞応答についてさらに検討を進める予定である。
|