2007 Fiscal Year Annual Research Report
乳がん由来株化細胞を用いたレプチン機能の阻害化合物の探索とその作用機序の解明
Project/Area Number |
19890183
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
海野 雄加 University of Shizuoka, 薬学部, 助教 (30433212)
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Keywords | 癌 / メタボリックシンドローム / レプチン / 細胞増殖 / 創薬探索 / スクリーニング / 細胞 / ケミカルジェネティクス |
Research Abstract |
近年、統計学的知見による結果から「肥満によるがん発症」の危険性が指摘され、肥満により引き起こされる疾患の克服が社会的・経済的にも重要になりつつあるが、その詳しい機構に関しては未知な部分が多い。そこで本申請では、肥満とがんを繋げる分子としてレプチンに着目し、ケミカルジェネティクス的手法、すなわちレプチンシグナル機構に存在するタンパク質群を標的とした阻害化合物を探索し、それを分子プローブとして利用することで、レプチンの機能を分子レベルで解明することを試みる。 当該年度で申請者は、大腸菌によるヒトレプチン発現システムを構築した後、精製レプチンをMCF7細胞に作用させて細胞増殖促進作用を検討したが、既知の論文情報と異なり、細胞増殖の促進は全く確認出来なかった。さらに、精製レプチンと市販レプチン共に、MCF7細胞を含む全6種類のヒト乳がん由来株化細胞において、細胞増殖促進作用を全く示さなかった。そこで、分泌レプチンを含有する脂肪細胞培養上清をMCF7細胞に直接処理したところ、精製レプチン処理とは異なり、顕著な増殖促進が観察された。これら結果から、肥満のがんへの関与は確認できたが、その中心となるタンパク質がレプチンかどうかに疑問が残った。現在、レプチン受容体過剰発現細胞を作製中であり、より好感度な細胞を用いることで、レプチンが細胞増殖を促進するか、すなわち、肥満とがんを繋げる分子かどうかを明確にする。その結果如何では、レプチンに固執せずに、肥満に関与するタンパク質が誘導する細胞増殖を阻害する化合物の取得を目指す。本研究で得られる化合物とその情報により、肥満によるがん発症に関与するタンパク質とその作用機序が明らかになるだけでなく、肥満により引き起こされる疾病への予防薬の開発に繋がるものと期待する。
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