2008 Fiscal Year Annual Research Report
合併症妊娠における着床異常の解明:アディポネクチンおよび関連サイトカインの関与
Project/Area Number |
19890193
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
成瀬 勝彦 Nara Medical University, 医学部, 助教 (70453165)
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Keywords | 妊娠 / アディポネクチン / インスリン抵抗性 / 絨毛細胞 / 胎盤 / 脂肪細胞 / サイトカイン / プロテアーゼ |
Research Abstract |
妊娠の成立において母体のインスリン感受性・抗炎症サイトカインであるアディポネクチン(Adn)濃度が着床のプロセスに影響を与え、これが低値(妊娠糖尿病)・高値(妊娠高血圧症候群)となる症例では後の流早産や子宮内胎児死亡、子宮内胎児発育遅延の原因となるという仮説を証明するために研究を行った。絨毛癌細胞を細胞外マトリックス上で培養し絨毛膜栄養膜細胞と同様の性質を持たせたものを用い、Adnの添加下でInvasion assay、Migration assay、XTT assayを施行したところ、細胞種によってAdnの添加は浸潤能の亢進・抑制双方の異なる影響を及ぼした。Migrationは一定の濃度の添加で抑制され、XTT assayで示される細胞の活性には差がなかった。続いて妊娠合併症での影響と実際の生体血管での影響を推察するため、妊娠満期の胎盤より絨毛細胞を分離し培養を行い、これを低酸素環境と高Adnの環境において培養して、産生されるサイトカインの変動についてマルチプル・サイトカインアレイで検討を行ったところ、5%酸素濃度下でインターロイキン(IL)-1βの産生が亢進し、0.1%の強い低酸素刺激ではプロテアーゼ系の抑制が認められること、Adnはこれらの産生には影響を及ぼさないが、細胞活性や障害性について検討するとこれらを改善する方向に働くことが示された。これらの知見から、まずAdnが絨毛細胞の浸潤に多彩な影響を及ぼしていることが明らかになり、妊娠糖尿病など低Adn血症の妊婦の高い流産率や子宮内胎児死亡の原因となっている可能性と、妊娠高血圧症候群において起こる高Adn血症は胎盤に対し保護的に働くものの、プロテアーゼ産生の破綻という生体の重篤な異常については代償しきれないことが強く示唆され、これまで不明であった妊娠中のいくつかの悲劇的な合併症の病態の一環が明らかになった。
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