Research Abstract |
先天性心疾患の子どもの身体の【コントロール感の獲得】過程の特徴を明らかにすることを目的に,本年度は,身体の〔調整力の発揮〕に着目した.先天性心疾患をもつ10歳〜16歳の子ども8名にインタビューした内容を,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した. 先天性心疾患をもつ子どもは,身体の〔調整力の発揮〕に至るために,自分の身体に対する《準備状態》を整えていた.《準備状態》には,<身体からのサインの把握><身体情報の開示><友だちの了解><同化への使命感><可能性への期待><自分の強みの確認><身体の予測>があった.またこれらは,身体を<探索する>段階から,<体調を整える><身体を守る><身体を試す><経験を活用する>段階へと変化していた>。 身体の〔調整力の発揮〕には,肯定的な《準備状態》を整える必要があった.<身体からのサインを把握>し,身体の適切な情報や,身体感覚の自分自身の指標を持つことができる場合は,<身体情報の開示><友だちの了解>は促進された.そして<同化への使命感>は緩和され,自分の<可能性を期待>し,<強みの確認><身体の予測>が可能となり,現状と制限にとらわれず,主体的に自分の身体状況を変化させていくことができた.一方で,友だちからの評価にとらわれたり,違いを恐れたり,開示を拒む度合いが強い場合は,否定的な《準備状態》となり,調整力を十分に発揮できず,身体を保護することに留まった. 身体の《準備状態》を整えることは,身体の調整力を内在化し,それを自分なりの状況に合わせて活用していくという〔調整力の発揮〕を促進させ,『コントロール感を獲得』していくために,子ども自身が具備すべき条件の一側面になると思われる.これは,療養を続けながら社会で生活する先天性心疾患の子どもたちの長期的支援における初期段階からの具体的支援につながると考えられる.
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