2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト化マウスを利用した生体内におけるHIV-1感染蔓延メカニズムの解析
Project/Area Number |
19890225
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡辺 哲 Nihon University, 医学部, 研究員 (70453876)
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Keywords | エイズウイルス / 動物モデル / 感染症 |
Research Abstract |
【目的】近年開発された免疫不全マウス(NOGマウス)は、ヒト造血幹細胞移植によりヒトT細胞を含む各種リンパ球の発生がおこる。このマウスにエイズウイルス(HIV-1)を感染させると、CD4陽性T細胞の減少を伴った長期の慢性感染が成立することがわかっている。このことは、このマウスがHIV-1の新規薬剤・ワクチンの評価モデルに有用であると同時に、体内の感染蔓延やエイズ発症のメカニズムを解明するのに役立つ可能性を示している。一方で、上記のようなエイズ様の症状を呈さないHIV-1実験株(HIV-1_<MN>)の存在が明らかとなった。本年度は、このようなHIV-1株による感染動態の違いが何に起因するのか、その解明を目的とした。 【結果と考察】ヒト造血幹細胞を移植したNOGマウスにHIV-1_<NL4-3>株およびHIV-1_<MN>株を感染させ、血液中のウイルスコピー数およびCD4陽性T細胞数を定期的に測定した。HIV-1_<NL4-3>株に感染したマウスでは、高いウイルスコピー数が3ヶ月以上持続する慢性感染が成立し、同時にCD4陽性T細胞数が経時的に減少して血液中にほとんど検出されなくなった。一方HIV-1_<MN>株に感染したマウスでは、血液中に高いウイルスコピー数はみとめられず、感染後3ヶ月以上経てもCD4陽性T細胞数の減少はみられなかった。次に、ヒト造血幹細胞を移植したNOGマウスから末梢血、脾臓、胸腺、骨髄、リンパ節を採取し、分離した細胞にHIV-1を感染させた。その結果、どの組織細胞においてもHIV-1_<NL4-3>株とHIV-1_<MN>株に対する感受性に違いはみとめられなかった。このことから、各組織細胞のウイルス感受性に違いがあるのではなく、感染後のウイルス蔓延過程に何らかの要因があると考えられる。今後は、このように体内でHIV-1感染を蔓延させる、あるいは蔓延を抑制する要因の解明を目指し、新規抗ウイルス薬の開発へ発展させる予定である。
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Research Products
(1 results)