Research Abstract |
強化インスリン療法にFTY720を介入させ,自己注射回数を1回とする新しい治療戦略を構築するため,1型糖尿病モデル動物(non obese diabetic(NOD)マウス)を用いてFTY720の有用性を検討した.NODマウスは発症を確認後,インスリン群(n=5,持効型溶解インスリンを1日1回皮下投与),FTY720十インスリン併用群(n=6,持効型溶解インスリンを1日1回皮下投与し,FTY720(0.1mg/kg,週2回)を経口投与),プラセボ群(n=5,経過観察のみ)の3群に分け,治療効果を検討しだ各群の治療開始後10週までの生存率は,FTY720+インスリン併用群では83%であり,プラセボ群(0%),インスリン群(20%)と比較して有意な延命効果が得られた. 1型糖尿病発症初期にFTY720を投与することで膵β細胞の機能を維持できれば,インスリンの基礎分泌を補うだけで血糖コントロールが可能になると予想された.そこで,各グループについて尿糖ケトン体および血糖値を測定し,インスリン群およびプラセポ群と比較した1その結果,FTY720+インスリン併用群では治療期間を通して有意な上昇は認められなかったのに対し,プラセボ群およびインスリン群の治療開始後3および5週の血糖値は,治療開始後1週と比較して有意に高値であった.また,FTY720+インスリン併用群において,良好な血糖:コントロールが得られていれば,膵β細胞がFTY720によって保護されていると考えられた.これを明らかとするため,膵臓のパラフィン切片を作製しヘマトキシリン・エオジン染色を行った.その結果,FTY720+インスリン併用群のラ氏島数,膵島炎スコアは,いずれも未発症個体レベルに維持されていた,抗インスリン抗体を用いた免疫染色については,条件設定が完了し,今後,FTY720による保護効果を明らかとする予定である.
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