2008 Fiscal Year Annual Research Report
1型糖尿病に対する新しい治療戦略の開発:NODマウスを用いた検討
Project/Area Number |
19890249
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
辻 琢己 Setsunan University, 薬学部, 助教 (90454652)
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Keywords | FTY720 / 1型糖尿病 / NODマウス / 強化インスリン療法 |
Research Abstract |
平成19年度に,1型糖尿病モデルマウス(NODマウス)を用いてFTY720の有用性を明らかとした.即ち,治療開始後10週までの生存率は,FTY720とインスリンの併用群(n=6)83%,プラセボ群(n=5)0%,インスリン群(n=5)20%であり,併用群には有意な延命効果が認められた.平成20年度はこの成果を組織学的,免疫学的および生化学的に明らかとするため,下記の研究を行った.1)併用群では,治療期間を通して有意な血糖値の上昇は認められず,血糖コントロールは良好であった.2)プラセボ群(n=3)と併用群(n=6)について治療開始5週後の血清中C-ペプチド濃度を測定した.その結果,併用群の血中C-ペプチド濃度はプラセボ群と比較して,有意に高く(P<0.05,Mann-Whitney's U-test),インスリン分泌能を持ったβ細胞が残存していることが示された.3)FTY720の有用性を組織学的に明らかとするため,治療開始後10週まで生存した個体のラ氏島数および膵島炎の程度を比較した.その結果,併用群(n=8)のラ氏島数とインスリン群(n=4)のラ氏島数には有意な差(P<0.05,Mann-Whitney's U-test)は見られなかったが,併用群の膵島炎スコアはインスリン群に比べて有意に低値(P<0.05, Mann-Whitney's U-test)であった.以上のことから,ラ氏島の破壊は糖尿病を発症した時点で既に生じているが,早期にFTY720の投与を開始することによって,膵島炎の進行を抑制し,良好な血糖コントロールが維持できることを明らかとした. 本研究結果から,持効型溶解インスリンとFTY720の併用療法は,β細胞の破壊を抑制し,良好な血糖コントロールが可能となるという極めて有益な研究成果が得られ,ヒトへの臨床応用が可能となる見通しを得た.
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