Research Abstract |
エンドセリンA受容体は,下垂体からの神経内分泌において重要な役割を担う受容体である。これまでの解析では,エンドセリンA受容体を介した神経内分泌には,Gq蛋白質の活性化を介する作用とGs蛋白質の活性化を介する作用が報告されていたが,その活性化の選択制御機構については不明である。そこで,ラット下垂体組織に着目しエンドセリンA受容体の情報伝達を解明すべく,まずエンドセリンA受容体の発現を解析したところ,C末端鎖のみの異なるスプライシング、アイソフォーム(C13)のクローニングに成功した(Mol.Endocrinol.掲載)。また今回得られたC13の配列は,ラットのみではなく,マウスやヒトのゲノムにおいても保存されていることが確認された。本アイソフォームの生化学的機能について解析した結果,従来報告されているエンドセリンA受容体と比較して,リガンド選択性には大きな違いがなかったにも関わらず,Gq蛋白質活性化における感受性が低下した。この結果より,エンドセリンA受容体のGq蛋白質の活性化に,受容体のC末端鎖が重要な役割を担うことが示唆された。そこで,C末端鎖の配列に着目したところ,従来報告のある受容体には,プロテインキナーゼCによるリン酸化部位が多く存在していることが明らかとなった。また,これらリン酸化部位は,全哺乳類のエンドセリンA受容体に保存されていた。そこで,エンドセリンA受容体によるGq蛋白質の活性化とプロテインキナーゼCとの相関についてPKC阻害剤を用いて解析したところ,Gq蛋白質の持続的な活性化は,プロテインキナーゼCの活性化により遮断されることが明らかとなった(日本薬学会第128年会報告)。本研究課題において,エンドセリンA受容体によるGq蛋白質の活性化により,プロテインキナーゼCの活性化が引き起こされることで,Gq蛋白質の活性化はフィードバック的に遮断され,他のG蛋白質への活性化へとスイッチすることが明らかとなった。
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