2008 Fiscal Year Annual Research Report
出血性ショック時の肺障害における炎症性サイトカインの役割と法医診断への応用
Project/Area Number |
19890263
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
佐藤 寛晃 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 産業医学基礎研究医員 (50441845)
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Keywords | TNF-α / IL-1β / neutrophil / inflammation / lung dysfunction |
Research Abstract |
全身麻酔下のラットにおいて,全血液量の25%を20分間で出血させる出血性ショックモデルを作製し,その肺について検討した。その結果,炎症反応の早期に上昇する炎症性サイトカインであるTumor Necrosis Factor (TNF)-αおよびInterleukin(IL)-1βが出血3時間後をピークとして肺実質中にて上昇し,出血5時間後には急性肺傷害マーカーである血清LDH-3アイソザイム濃度の上昇や動脈血ガス分析による呼吸機能の低下を認めた。しかし,出血前に炎症性サイトカイン発現阻害剤を投与したところ,炎症性サイトカインの発現と,それに続く肺傷害および呼吸機能の低下は認められず,出血性ショック後に肺実質内で生じる炎症反応が肺障害の進展に強く関与していると考えられた。そこで,炎症反応早期に出現する好中球を免疫組織学的に染色し,その発現頻度を観察したところ,出血5時間後には肺実質内において有意に増加したが(3.44個/250μm^2),阻害剤投与群ではその増加は認められなかった(0.23個/250μm^2)。この結果から,肺実質中での好中球の有意な増加は出血性ショックおよびそれに続いて生じる肺障害の診断マーカーとなり得る可能性が明らかとなった。 これらを踏まえ,当教室における過去17年間の解剖事例を死因ごとに分類し,死後変化や病的変化を考慮して死後24時間以内で病的所見が認められない事例において肺実質内における好中球の出現頻度を免疫組織学的に比較検討したところ,出血性ショック事例において,好中球の有意な増加が確認され,実際の法医鑑定においても炎症性サイトカインの発現とそれに続く好中球の有意な増加が,出血性ショックの診断マーカーとなり得る可能性が明らかとなった。
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