2008 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌感染による細胞破壊抑制機構に関わる病原因子の機能解析
Project/Area Number |
19890277
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
石原 朋子 National Institute of Infectious Diseases, 細菌第一部, 研究員 (30450555)
|
Keywords | 感染症 / 細菌 / 微生物 |
Research Abstract |
赤痢菌は腸管上皮細胞に侵入・拡散し、最終的に感染細胞を含む上皮組織を破壊することによって出血性下痢を引き起こす。しかしながら、赤痢菌に感染した上皮細胞の破壊プロセスについて詳細な分子メカニズムは明らかではない。我々はこれまでに赤痢菌の病原性プラスミドのうち細胞侵入に必要とされる最小限の病原因子のみを保有する変異株の解析から、赤痢菌感染では菌の細胞侵入において誘導される感染細胞の核のDNA damageを赤痢菌自身が抑制することによって、感染細胞の著しい破壊を抑制することを示してきた。変異株感染細胞のDNA damageはクロマチンの凝縮を伴うが、アポトーシスに特異的なヌクレオソーム単位のDNA断片化を伴わず、感染細胞の破壊はcaspase inhibitorの一つであるZ-VAD-FMK存在下で抑制されなかった。また、抗リン酸化特異抗体を含む抗体マイクロアレイ解析によって感染細胞の細胞内シグナル分子の挙動をモニタリングした結果、変異株感染細胞においてHistone H2AXの139番セリン部位のリン酸化およびCDK1/2の15番チロシン部位の脱リン酸化が亢進した。これらの細胞応答はDNA2本鎖切断やDNA damageが生じた場合に生じることが知られている。また、サイトカイン活性化と炎症において重要な役割を果たすinflammatory caspasesの不活性型前駆体Pro-caspaseの減少を認めた。一方、変異株感染における感染細胞の著しい破壊はマクロファージでは認めらなかった。したがって、赤痢菌が上皮細胞に侵入する過程において、変異株では潜在的にDNA damageを引き起こし感染細胞の破壊を昂進する作用を持つ一方、野生株はこれらの作用を抑制し感染細胞の生存を維持する機構を持つことが示唆された。
|
Research Products
(5 results)