2007 Fiscal Year Annual Research Report
地層として識別不可能な火山灰層の検出及び同定-島根大学構内遺跡を例として-
Project/Area Number |
19914003
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
高須 佳奈 Shimane University, ミュージアム, 技術補佐員
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Keywords | 火山灰 / 帯磁率 / 考古遺跡 |
Research Abstract |
【研究目的】広域テフラとしての火山灰層は鍵層として重要だが、火山灰層の堆積条件により地層として識別できない事もある。本研究は,火山灰層が含まれている可能性が高いが,その存在が肉眼で識別不可能なボーリングコア試料(島根大学構内遺跡発掘調査の際に採取)を分析対象に,火山灰の降灰層準の検出を目的に行った. 【研究方法】(1)採取したボーリングコアについて、帯磁率の垂直変化を測定した。(2)帯磁率が相対的に高い試料を中心に,火山ガラスの抽出を行った。(3)抽出した火山ガラスのEPMAによる化学組成分析を行った. 【研究成果】本研究では,帯磁率が相対的に高い試料ほど火山ガラスの抽出量も多い傾向があった.抽出した火山ガラスは,EPMAによる化学組成分析の結果,約7300年前に降灰した鬼界-アカホヤ火山灰(以下,K-Ah火山灰)と約27000年前に降灰した姶良丹沢火山灰(以下AT火山灰)に由来する2種類の火山ガラスに大別することができた.このうち,K-Ah火山灰由来の火山ガラスは特定の深度以下では検出ざれず,この深度が,試料採取地点におけるK-Ah火山灰降灰層準として妥当であることが明らかになった.また,明らかに再堆積した火山ガラスでも新鮮な形態で観察ざれ,形態からは再堆積かどうかの判断は困難であったことから,考古学発掘の際に行われるような火山灰層の検出を目的とした掘削については,火山灰層検出面より下位についても,堆積物の構成粒子の検討を詳細に行う必要があることが明らかになった.さらに,火山灰層は同一時間面を示す鍵層として利用されているが,本調査地域のようにかつて沿岸流の影響を受けたり,供給源が近い地理的環境にあった場所では,火山ガラスの再移動および再堆積が,1000年〜20000年という長期の時間的間隔でも起こりうることが明らかになった.これらの研究結果は2007年8月に学会にて発表し,論文にまとめたものを2008年5月に投稿予定である.
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