2007 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌切除患者の貧血に対する十前大補湯と鉄剤の併用効果に関する研究
Project/Area Number |
19923033
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
嶋田 沙織 University of Tsukuba, 附属病院薬剤部, 薬剤師
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Keywords | 十全大補場 / 貧血 / 鉄剤 |
Research Abstract |
研究目的:十全大補湯は、胃癌切除患者に対して抗癌剤の副作用軽減や免疫賦活、貧血の改善を目的として汎用され、貧血症状の強い患者に対しては、さらに鉄剤と併用される。しかし十全大補湯単独及び鉄剤併用投与の有効性・安全性について評価した報告は無く、適切な投与期間についての知見も無い。そこで、胃癌切除患者に対する十全大補湯と鉄剤の投与指針確立を目的に、貧血改善効果と投与期間について検討した。 研究方法:当院通院・入院中の胃癌切除患者を対象に、十全大補湯と鉄剤の処方実態(併用期間や併用頻度など)及び貧血に関連する検査項目を調査した。 研究の成果:十全大補湯を投与中の胃癌切除患者31名中19名で経口鉄剤が併用されており、十全大補湯の投与期間の中央値は225日であった。十全大補湯によるヘモグロビン(Hb)値の改善効果は2カ月の投与により約40%の患者で認められ、鉄剤を併用すると80%まで高まることが明らかとなった。同様に、ヘマトクリット値も改善したが、赤血球数には影響を与えなかった。Hb値の改善効果は投与開始時のHb値と関連しており、Hb値が12.5g/dLを超えた患者に対しては改善効果が期待できないと考えられた。 さらに、胃癌切除後に十全大補湯を単独で投与した23名について調査したところ、投与開始が遅かった患者では、徐々にHb値の低下が認められ鉄剤の投与が必要となった。よって術後早期(1カ月以内)に十全大補湯の投与を開始することが貧血の悪化防止に有用と考えられた。 また、十全大補湯投与中に血清カリウム値の低下した症例が存在し、甘草含有量の少ない漢方薬でも、腎機能障害のある患者では偽アルドステロン症のリスクが高まると考えられた。甘草含有漢方薬投与中の健常被験者の尿中コルチゾールを測定したところ、服用前と比較して濃度が上昇しており、甘草含有漢方薬がコルチゾールの代謝に影響を与えることを確認した。
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