2019 Fiscal Year Annual Research Report
反応性と安定性を兼ね備えたシリル化剤の開発とその利用
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19F01033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
依光 英樹 京都大学, 理学研究科, 教授 (00372566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KARAD SOMNATH 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2021-03-31
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Keywords | シリル基 / シリル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,2-ジ-tert-ブトキシテトラメチルジシランを用いてアルコキシシリル基の導入反応及び変換反応について検討した。パラジウム触媒による有機ハロゲン化物のシリル化についてBuchwaldらのトリアルキルシリル化反応をもとに検討したところ、塩化アリールを出発物質とする反応条件を見いだした。反応条件および収率に改善の余地があるため、さらに活性化させることができるシリル基前駆体を検討する必要がある。また芳香族C-H結合の直接シリル化については、國信、金井らによって報告されているヘキサメチルジシランを用いた芳香環の直接トリメチルシリル化の条件をもとに検討した。この結果としてこれまでのところ十分な収率で生成物が得られる条件は見つかっていない。 一方でアルキンへのシリル基付加反応を調査するなかでプロパルギルアルコールに対してシリルリチウムがanti付加する現象を発見した。この反応の基質一般性などについては2年目に継続調査する。また、生物活性物質や天然物のケイ素置換類縁体の合成にも展開していく。これらの反応開発と並行して、アルコキシシリル基が安定性と反応性を兼ね備える理由を計算化学に頼りつつ調査するなかで、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールを配位子として7員環構造をもつ環状アルコキシシリル基の顕著な安定性と特異な反応性を発見している。その安定性、および合成化学的な応用を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルコキシシリル基の特異な性質をもとにした反応の検討を順調に進めている。芳香環のアルコキシシリル化反応ではその性質を活用してこれまで容易には合成できなかった嵩高いアルコキシシリル基の導入を達成した。塩化アリールからだけでなく、芳香族C-H結合の直接シリル化に成功した点も意義深い。 また、1,4-ブタンジオールを配位子として7員環構造をもつアルコキシシリル基が顕著な安定性と特異な反応性を示すことを偶然発見した。さらに、プロパルギルアルコールに対してシリルリチウムがanti付加する反応を見つけるなど、ケイ素化学を合成化学により深く応用するための準備が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立した知見をもとにして以下の内容に取り組む。 1.プロパルギルアルコールに対するシリルリチウムのanti付加反応を確立する。さらに、生成物からカップリング反応などを行って挑戦的な構造を構築する変換も実現し、本反応の有用性を示す。また、ケイ素化生物活性物質の探索も行う。 2.プロパルギルアミンに対するシリルリチウムのanti付加反応を実施する。さらに、光学活性アミンを出発物質とする不斉転写も検討する。 3.シリル化芳香族化合物からアミンへの変換反応を検討する。現在のところN-ベンゾイロキシモルホリンを用いた、アリールシランのアミノ化を予備的に見つけており、触媒、溶媒、添加物などを重点的に検討する。
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