2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本工芸における地域性の創出ー明治期における日本陶磁史の成立をめぐって
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19F19003
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
並木 誠士 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (50211446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ROH JUNIA 京都工芸繊維大学, その他部局等, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 輸出陶磁器 / 薩摩焼 / 京薩摩 / 沈寿官 / 錦光山宗兵衛 / 宮川香山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、もともと薩摩藩で制作された薩摩焼が、京薩摩に代表されるように、京都・横浜・金沢など各地でいわゆる薩摩風の焼き物として展開してゆく状況を、海外での需要、万国博覧会での評価など海外からの視点から検討することを目的として進めた。 コロナ禍のために鹿児島での作品・資料調査は2020年秋にようやく実施することができたが、調査では、鹿児島市立美術館、黎明館、沈壽官窯、尚古集成館・仙巌園、鹿児島大学博物館、薩摩伝承館に収蔵されている作品および文献資料を確認した。なかでも沈壽官窯では明治初期の薩摩焼の状況を詳細にしることができ、本研究の遂行に大きく役立った。具体的には、沈壽官窯による制作が、おもに下地制作を中心に展開していたこと、その結果、色絵付を他の地域に依存せざるを得なかったことが明らかになった。このため、色絵付の技術ですでに江戸時代以来の蓄積のあった京都において京薩摩が作られるようになったことが確認できた。さらに、沈壽官窯では、他地域で絵付をすることにより利益が他地域に流れることを避けるために、地元に絵付を要請する機関を設立することを画策したが失敗に終わったことも確認できた。 京薩摩に関しては、錦光山宗兵衛窯を中心に研究をおこなった。その結果、錦光山が京薩摩から離れる契機が、宗兵衛のヨーロッパでの知見およびアールヌーヴォーを京都の陶芸界に伝えた浅井忠らの活動の両面であったことを明らかにした。 また、横浜の薩摩に関しては、宮川香山を中心に研究をおこない、香山の高蒔絵の装飾的な作品も、その素地は薩摩に依っていること、その後、釉下彩による作品制作を本格化することにより薩摩風から離れることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鹿児島出張が可能になったため、本家薩摩焼の中心的存在である沈壽官窯の明治期における状況を詳細に知ることができ、その結果、京都や横浜、金沢などにおける薩摩風の陶磁器制作の実態解明について多くの知見を得ることができた。鹿児島における絵付師育成の試みが実現しなかったことが、下地の制作に注力する薩摩の陶磁器制作の転換の要因であったことなどを理解できたことは大きな進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
鹿児島での薩摩焼の調査結果を踏まえて、海外での評価を視野に入れつつ、京都だけでなく金沢、横浜などの状況も調べて、薩摩風の流行とその変遷の様相を明らかにしたい。
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Research Products
(2 results)