2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rylene diimide-based n-type seidonducting polymers for thermoelectronic materials
Project/Area Number |
19F19037
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
瀧宮 和男 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (40263735)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG YANG 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | n型半導体ポリマー / 電界効果トランジスタ / 熱電変換 / 電子移動度 / パワーファクター |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画において強い電子不足性を有する三種のリレンジイミド(ナフタレン-、ペリレン-、及びナフトジチオフェン-ジイミド)を基盤とするn型有機半導体ポリマーの開発、その半導体特性の評価、および熱電変換特性を検討することを計画していた。今年度はこれら三種のリレンジイミドのうち、母体自体のLUMOエネルギーレベルが最も低いナフトジチオフェンジイミド(NDTI)を用いて、ビチオフェンイミド(BTI)、及びチアゾール(Tz)といった電子不足芳香族を組み合わせたポリマーを合成した。 このうち、NDTI-BTI-Tzを主鎖構造に組み込んだ三元系ポリマーでは、塗布プロセスにより作製した電界効果トランジスタにおいて、0.1 cm^2/Vsを超える高い電子移動度を示すことが確認できた。また電子ドープ(n型ドープ)を行うことで、10μW /m K^2に達するパワーファクター(熱電変換素子の特性を表す)を示すことも確認でき、本ポリマー骨格が優れたn型半導体ポリマーの主鎖構造として高いポテンシャルを持つことを見出した。さらに、可溶性置換基としてNDTI上に導入している分岐アルキル鎖を2-デシルテトラデシル基から3-デシルペンタデシル基に変更したところ、半導体特性が大きく向上することもわかった。また、電界効果トランジスタにおける移動度、ドープ状態でのパワーファクターともに約5倍向上した。(移動度 0.55 cm^2/Vs、パワーファクター 53.4μW /m K^2)。このうち、パワーファクターはこれまでに報告されているn型高分子材料の中で最も高い値となっている。 これらの結果から、NDTI-BTI-Tzの三元系ポリマーの半導体特性や熱電特性において、可溶性分岐アルキル基における分岐位置が極めて重要であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以上のように、NDTIを用いた三元系ポリマーにおいて、高い半導体特性と熱電特性を示す材料を見出すことができ、そして分子構造の観点では、可溶性分岐アルキル置換基の分岐位置が重要であることが分かった。これに加え、ポリマー薄膜中での結晶性や分子配向をX線回折により評価することで、今後の材料設計に対し示唆に富む重要な知見を得た。すなわち、最も高い特性を示したポリマー薄膜が高い結晶性を持つこと、また、薄膜中でポリマー鎖はエッジ-オン型とフェイス-オン型の二つの異なる配向(バイモーダル配向)を持ち合わせていることを確認した。このようなバイモーダル配向は三次元的なキャリアの移動を助け、熱電特性の鍵となる電気伝導率の向上(11 S/cm)に貢献していると考えられる。さらにバイモーダル配向による三次元的な構造は、ドーパントを保持するためにも適した構造であると考えられ、ドープ後の結晶性が維持されていることもわかった。 以上の結果から、材料の分子構造のみならず薄膜中での配向性、凝集構造に関しても重要な知見が得られたと認識している。これらの知見は今後の半導体ポリマーの材料設計において、また、材料評価にも重要な観点を与えるものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、新規n型半導体ポリマーの合成と評価を続け、より優れた特性が発現する系の探索を行う。 この中で、n型半導体ポリマーではLUMOエネルギーレベルが重要であり、特に熱電材料ではドープする必要があるため、低いLUMOレベルを実現できるかが鍵となる。これまでは、構成するビルディングブロックがもつLUMOを重視し、その組み合わせを基本として材料設計を行っていた。この方針に加え、今後理研のスーパーコンピュータによる量子化学計算が利用可能となったので、様々なビルディングブロックを組み合わせたやや大きめのオリゴマーをシミュレーションすることで、候補とするポリマーのLUMOレベルや主鎖構造の平面性などを予測しつつ、標的ポリマーを定めることができる。 また、主鎖構造に加え、分岐アルキル側鎖の設計も重要であることが分かったため、オリゴエチレン鎖や異なる分岐アルキル鎖などについても検討を加える。さらに、可能であれば分子動力学計算を研究に取り入れ、側鎖の配向や影響を評価や、薄膜中での構造を予測することも取り入れたいと考えている。 以上のポリマーの開発を行いつつ、これまでに合成したポリマーについてもドーパントの種類を変え特性向上を図るとともに、薄膜中での構造やドープ剤との相溶性など、詳細な構造的要因を検討することで、n型熱電材料のための分子設計指針(指導原理)の導出を目指す。
|