2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19F19041
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 弘志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (20598586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE JET-SING 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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Keywords | 自己集合 / 多孔性 / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種の細胞内シグナル伝達では、外部刺激を遠隔に伝搬するために、タンパク質の機械的連動が重要な役割を果たす。例えば、視覚情報伝達では、光刺激によってレチナールのcis-trans異性化が起こり、その構造変化がロドプシンの構造変化を誘起し、さらには会合したGタンパクへとシグナルが伝達される(Palczewski et al. J. Biol. Chem. 2007, 282, 9297.)。このようなシグナル伝達メカニズムに着想を得て、複数のユニットが連動して働く分子機械が合成されてきた。従来研究では、さまざまな動きを示す分子機械が無数に報告されてきたが、その多くは、溶液中での孤立した分子の振る舞いを観察するに留まり、シグナルの伝達距離にも限界があった。そこで、本研究では、材料全体に渡る長距離シグナル伝達を実現するため、本研究課題においては、無数の可動ユニットが連動して働くことで新たな機能を発現する『刺激に応答する多孔性結晶開発』に挑戦している。特に、水素結合や配位結合によって構築された多孔性ネットワークに如何にして動的挙動を付与するかの新たな手法開発に主眼を置いている。初年度には、回転自由度を持つことが知られる分子構造ユニットを導入した種々の有機分子の合成を行った。具体的には、フェロセンを1つまたは2つ含み、カルボン酸基やピリジル基を有する分子を設計し、実際に合成を行った。得られた新規含フェロセン化合物の構造同定を各種スペクトル測定により完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに6種類以上の新規含フェロセン化合物の合成に成功している。これらはいずれもフェロセンの回転運動に起因する大きなコンフォメーション変化を示し、溶液中では自由回転していることが確認されている。これほどコンフォメーションの自由度が大きな構成成分からなる多孔性結晶の合成例は過去になく、今後大きな親展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成した含フェロセン分子を用いた多孔性結晶合成を行う。方法は大きく2つに分かれる。(1)水素結合を用いた結晶合成:既に合成が完了した含フェロセン化合物は、カルボン酸やピリジンユニットを有しており、それぞれ水素結合ドナー、アクセプターとして働くことが期待できる。これらの分子単体もしくは、他の水素結合アクセプターやドナーと混合することで水素結合ネットワークによって支えられた多孔性結晶の合成を試みる。(2)配位結合を用いた結晶合成:様々な金属イオンと錯形成させることで、多孔性配位高分子の合成を試みる。金属イオンとしては、既に数多くの配位高分子合成例が報告されている亜鉛や銅イオンをまず検討する。
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