2019 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of metal-insulator transition and negative thermal expansion in layers ruthenates.
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19F19057
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
東 正樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40273510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HU LEI 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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Keywords | 負熱膨張 / 軌道秩序 / 金属絶縁体転移 / 精密構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノテクノロジーの進展に伴い、熱膨張による位置決めのずれや異種接合界面の剥離の問題が顕在化している。そのため、熱膨張抑制に用いる事のできる、温めると縮む、負熱膨張材料への関心が高まっている。Ca2RuO4は-123℃~72℃の温度範囲で、金属絶縁体転移と、-115×10-6/℃もの巨大な負熱膨張を示し、ビスフェノール型エポキシ樹脂の熱膨張を相殺する事が出来るため、注目を集めている。また、Ca3Ru2O7も低温で負熱膨張を示す。高価なRuを廃した物質開発のためには、これらの負熱膨張の起源を解き明かす必要がある。Ca2RuO4においては、結晶粒が長手方向に縮み、直交する方向には膨張する異方的熱膨張によって、材料組織中の空孔が減少する事が巨大負熱膨張の起源と考えられている。しかしながら、その異方的熱膨張を生じるメカニズムは不明であった。そこで、放射光X線を用いた精密局所構造回位席を行った。
本年度は、放射光X線回折データリートベルト解析並びに放射光X線全散乱データPDF解析によって、Ca2RuO4の精密構造解析を行った。その結果、低温ではRu4+のdxy軌道秩序による酸素八面体の変形が起こり、また、八面体間の角度が昇温によって変化する事が、異方的熱膨張の起源である事を明らかに出来た。また、Cd2Ru2O7の単結晶育成にも成功している。次年度以降、この試料を用いた精密物性測定と精密構造解析で、負熱膨張のメカニズムを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった、Ca2RuO4の異方的熱膨張の起源を解明する事が出来た。また、Cd2Ru2O7の単結晶育成にも成功している。来日の遅れから実質半年の研究期間であった事を考えると、順調に推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Ca2RuO4のEXAFS測定を行い、リートベルト解析、PDFの結果を追認する。軌道秩序について、さらに直接的な証拠が得られるはずである。また、Cd2Ru2O7の放射光X線回折データリートベルト解析、放射光X線全散乱データPDF解析、放射光EXAFSによる精密構造解析と、熱膨張の異方性性測定を行う。また、Ca3Ru2O7に関しても研究を開始したい。
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