2019 Fiscal Year Annual Research Report
分子を用いた縦型スピントランジスタ: 次世代スピントロニクスデバイスに向けて
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19F19066
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
早川 竜馬 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (90469768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BASU TUHIN 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 有機ラジカル / 磁気抵抗効果 / トンネル2重接合 / 縦型トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては縦型トランジスタのチャネル層に相当するトンネル2重接合に磁性分子として有機ラジカル分子(TEMPO-OPE)を集積する技術を確立した。本分子については申請者によるメカニカルブレークジャンクション法を用いた単分子接合において巨大磁気抵抗効果が発現することを報告しており、本デバイスに集積できれば効率的なスピン制御に繋がると期待される。 まず本デバイスに有機ラジカル分子を集積するためには分子を真空蒸着により基板上に分散させる必要がある。しかしながら、多くの磁性分子で蒸着時の熱ダメージにより磁気特性が失活することが報告されている。そこで10nm程度のTEMPO-OPE薄膜を作製し、電子スピン共鳴法(ESR)により分子スピンが失活しないかどうか評価した。その結果、TEMPO-OPE分子の有するニトロキシルラジカルに起因するピークが観測され、真空蒸着後も分子スピンが失活していないことを確認した。また、全反射FT-IRを用いて本分子に特徴的な振動スペクトルも検出され熱分解も生じていないことを確認した。 続いて、トンネル2重接合を形成するためSiO2(1nm)/Si基板上に本分子を10^13個程度蒸着した。その後、原子層体積法によりAl2O3を3nm程度形成し、トンネル絶縁膜の中に有機ラジカル分子を内包した。その後、Au電極を形成し素子を作製した。低温プローバーを用い5 Kにおいて電気測定評価を行った結果、本分子のエネルギー準位を反映した明瞭な共鳴トンネル電流を観測することに成功した。今後、本申請の主要課題である分子スピンによるトンネル電流制御を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては縦型トランジスタのチャネル層に相当するトンネル2重接合に磁性分子として有機ラジカル分子(TEMPO-OPE)を集積する技術を確立した。シリコントンネル2重接合において本分子の分子軌道を反映した明瞭な共鳴トンネル電流を観測することに成功した。今後本申請の主要目的である分子スピンによるトンネル電流制御を進めていく上での基幹技術を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請課題の主要目的である分子スピンによるトンネル電流制御を実現していく。本年度において、その前段階であるシリコントンネル2重接合素子への有機ラジカル分子の集積および分子軌道を反映した共鳴トンネル電流の観測に成功した。今後は現有する磁場印可型低温プローバーおよびクライオスタットを用いて磁気抵抗効果および磁場中での非弾性電子トンネル分光測定を進めていく。申請者は本分子を用いた単分子接合において巨大磁気抵抗効果を観測しているが、そのメカニズムは明らかになっていない。本提案デバイスの評価を通して磁性分子の電子スピン状態変化によるものか、あるいは分子/金属界面での電子状態変化(スピン軌道相互作用によるエネルギー準位の分裂など)によるものか明らかにする。合わせて、有機ラジカル分子を内包したトンネル2重接合をチャネル層に用いた縦型トランジスタへ拡張する。
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