2019 Fiscal Year Annual Research Report
多能性幹細胞におけるRNA2次構造およびタンパク質翻訳調整機構の解明
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19F19112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 拓也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (60546993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE JOONSEONG 京都大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / RNA2次構造 / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
mRNAは、タンパク質合成の鋳型となる伝令役として重要な役割を果たしており、mRNAの発現量は最終機能産物であるタンパク質の発現量に直接影響を与える。ところが、体細胞初期化過程のように、細胞の状態が大きく変化する時にはタンパク質量の変化とmRNA自身の量の変化が一致しない場合があることが知られている。本研究では、細胞内のRNAの2次構造に着目し、初期化過程においてRNA2次構造を網羅的に決定し、RNA2次構造とタンパク質翻訳の関連性を明らかにすることを目的としている。本年度は、体細胞初期化前後の細胞を用いて、細胞内におけるRNA2次構造を同定する手法の検証を行った。その結果、我々の実験系では、化学プローブDMS (dimethyl sulfate) を使用した手法が、現在までよく知られているRNAの2次構造を正確に捕捉できることが明らかとなった。さらに、DMS処理後の細胞から抽出したRNAを用いたシーケンシングライブラリ作製手法(DMS-MaPseq法)を改良し、より短時間で再現性よく実施可能なライブラリ作製手法を確立した。また、初期化前後でmRNAの発現量は変化しないが、タンパク質量は初期化後に増加する多能性関連遺伝子について詳細な解析を行ったところ、非翻訳領域がタンパク質の増加に寄与していることを見出した。また、それらの非翻訳領域の細胞内でのRNA2次構造が初期化過程でダイナミックに変化することも観察している。このことは、それら領域の構造変化が翻訳制御に関与することを示唆するものである。実際、構造変化が生じる非翻訳領域を用いたレポーターコンストラクトを作製し、初期化前後でレポーター遺伝子の発現が変動することが示された。今後、これらレポーターコンストラクト等を用い、より詳細な翻訳制御メカニズムの解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞内におけるRNA2次構造を網羅的に同定する手法を確立した。また、それら確立した手法を用いて、体細胞初期化過程前後のRNA2次構造に関するデータを取得し、特定の多能性関連遺伝子において翻訳制御に関与する可能性のあるRNA2次構造を同定することができた。さらに、それら2次構造を用いたレポーターコンストラクトの作製にも成功しており、初年度の目標は達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 翻訳制御メカニズムの解明 RNA2次構造の変化に付随して発現が変化するレポーター遺伝子を用いて、RNAの2次構造制御メカニズムおよび翻訳制御メカニズムの解明を目指す。具体的には、着目するRNA配列にどのようなRNA結合タンパク質の結合領域が存在するかを調べることによって、RNA制御因子候補を同定し、それらの制御因子の介入実験を実施する。
2. non-codingRNA(ncRNA)の2次構造の変化の解析 ncRNAがさまざまな生物学的機能をもつことが示されているが、それら多くのncRNAの2次構造や2次構造のダイナミクスについては不明な点が多い。そこで本年度は、特に、ncRNAにも着目し、体細胞初期化過程でそれらRNAの2次構造が変化するのか、変化するのであれば変化する箇所にどのような特徴があるのかを調べ、ncRNA の機能性候補領域の同定を試みる。
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