2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19F19302
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柴田 芳成 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (70448158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FITTLER ARON 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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Keywords | 『万葉集』 / 外国語訳 / ドイツ語訳 / 序詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
①「『枕草子』の初期のドイツ語訳について―フィッツマイヤー訳を中心に―」(中古文学会令和元年度秋季大会で口頭発表) 本研究課題の中の問題点には含まれていないものの、本研究課題の一部が『万葉集』序詞の外国語訳と比較的研究であり、『万葉集』の最初の欧文訳を行ったフィッツマイヤー(August Pfizmaier)の古典文学への理解について検討する発表内容であった。本発表では、フィッツマイヤーによる『枕草子』のドイツ語訳について、その翻訳目的や翻訳者による評価などといった基礎的なことを確認し、『枕草子』を代表する心情表現である「をかし」の訳出についての検討を通して、フィッツマイヤーの『枕草子』受容について明らかにした。これは、日本古典文学の西洋での初期受容に関する、いまだにほとんどなされていない研究の一部として意義があると思われる。 ②「『万葉集』のドイツ語訳における序詞の受容―同音類音反復式の序詞を中心に―」(第13回研究会「海外における平安文学」(伊藤鉄也 基盤研究(A)17H00912 海外における平安文学及び多言語翻訳に関する研究、およびフィットレル・アーロン 日本学術振興会外国人特別研究員P19302「古典和歌の翻訳、および和歌と西洋詩の比較研究」の合同開催)で口頭発表) 本発表では、『万葉集』序詞の外国語訳の一部として、ドイツ語訳について検討、考察した。『万葉集』最初の欧文訳でもあるフィッツマイヤーによるドイツ語訳から、最新のウィットカンプ(Robert F. Wittkamp)の翻訳まで、6種のドイツ語訳(ほぼ全て)を検討し、同音類音反復のものを中心に、序詞がある和歌を検討し、その翻訳方法を分類、分析した。(字数の都合上、詳細は「8.現在までの進捗状況」にまとめた。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書のc「研究計画」の(ハ)「今後の研究計画」に明記した1~3の中の1.である、『万葉集』の同音類音反復式の序詞の英訳とドイツ語訳についての研究、および西洋詩との比較研究の中から、ドイツ語訳の検討がおおむね完成している。その翻訳傾向が翻訳者の理解と和歌翻訳への態度によって異なるところがあるものの、同音類音反復式の序詞が、「忘れ貝―忘れ」や「斎藻(いつも)の花―いつも」などといった、人事に関する内容と同音の言葉が景物にも含まれている場合に復元されている傾向があり、他の場合は直喩をはじめ、譬喩で代用されている例が多く、序詞の景物と人事が内容的に、または文法的につなげられていない例も多く見られることが明らかになった。 なお、英訳資料と比較研究に必要な資料の大半も入手済みであり、検討が順次進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
c「研究計画」の「(ハ)今後の研究計画」に明記した1~3の中の1.の続きに関しては、『万葉集』序詞の英訳を検討し、その傾向と特徴を、ドイツ語訳と比較して明らかにする。また、この検討結果をまとめて、令和2年6月末まで『国際日本研究』(筑波大学大学院人文社会科学研究科国際日本研究専攻)へ投稿する予定である。さらに、西洋詩との比較検討に関しては、主に、酷似する修辞が見いだせるヨーロッパの民謡の修辞を序詞と比較検討し、論文にまとめ、令和元年9月末まで『人文』(学習院大学)へ投稿する予定である。 2.である本歌取りの翻訳についての研究も令和2年度内に実施し、『新古今集』歌の英訳とドイツ語訳の検討を中心に進めていく。その結果についてはひとまず、令和2年11月に開催される(予定である)第44回国際日本文学研究集会(於国文学研究資料館)で口頭発表する予定である。(なお、同じ内容は11月末、その会議録に論文として投稿する。) 3.である引歌の翻訳についての研究は、『源氏物語』の引歌の例を、その英訳とドイツ語訳での検討を中心に進めていく。この内容に関しては、古代文学研究会令和3年3月例会で口頭発表を予定している。それ以後の発表と論文投稿について、具体的には未定であるが、令和3年度においても、令和2年度の予定のように、1~2回ほどの論文投稿と1~2回ほどの学会発表を予定している。
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Research Products
(5 results)